私たちがネットショッピングをするとき、購入の決め手になる要素のひとつが「写真」です。商品の詳細や使用イメージなど、想像していた通りの商品かどうかをある程度知りたいときは、百の言葉よりも一枚の写真の方が説得力を持つこともあるでしょう。
「ネットショップ初心者でも売れる商品写真の基礎知識とつくり方」では、ECショップにおいて効果的な写真の性質や撮影時の留意点をカテゴリごとに紹介。商品撮影をカメラマンに依頼する際のディレクションについても触れつつ、SNS戦略、カートシステムにいたるまで、ECショップ内の画像にまつわるあらゆるテーマを網羅し解説しています。
本記事ではChapter1「ECにおける写真の重要性」より、ECサイトにおける写真の質と量について解説します。
「いい写真」は売上をつくる
「いい写真」の定義を考えてみよう
「いい写真」の定義はさまざまですが、仮に「質の高いもの」としましょう。このとき、商業写真の世界では「いい写真」を撮るためのセオリーのようなものが存在します。たとえば、ライティングや構図、使用するレンズの選び方など、プロのフォトグラファーにとっては常識ともいえる「知っていて当たり前」があるのです。
人物や商品などのライティングに関していえば、たいていの場合、光の方向を逆光や半逆光にして撮ることが多いですし、人物の撮影では80~100mm前後の中望遠レンズがよく使われます。
もちろん、ケースバイケースで「正解」は変わりますが、これらのセオリーは先に挙げたように特に難しいものではなく、知っているだけで、劇的に「いい写真」に近づけることができます。
売上に貢献する写真が「いい写真」
もう少し、解像度を上げてみましょう。ECサイトにおける「いい写真」とは、どんなものでしょうか。これは、ずばり「売上に貢献する」写真といえます。
おもしろいことに、プロが撮った写真でなくともちゃんと商品が売れることはあります。つまり、必ずしも「高品質=いい写真」ではないということです。
そこにはカラクリがあります。先に述べたようなプロとしての「いい写真」だけではなく、写真の点数や、消費者が望んでいるものにちゃんと応えられている、いわば「かゆいところに手が届く写真」であることが重要なのです。
1枚の高品質な写真だけでは情報量として足りない
たとえば、不動産検索サイトをイメージしみてください。たいていの写真はプロが撮ったものではなく、不動産会社のスタッフが撮ったものが多いでしょう。
彼らは、ほとんどの場合、スマートフォンや手頃なカメラで簡易的に撮影するでしょうし、写真のクオリティは決して高いものではないはずです。しかし、ここで大事なのは写真のクオリティでしょうか? サイトの利用者はたくさんある物件の中から何を手がかりに興味を持つのでしょうか?
もちろん、家賃や立地なども判断の決め手になりますが、写真がない物件情報を見て、見学しようとは思わないはずです。個人的な意見になりますが、このような不動産検索サイトでは、まず写真の点数が重要なのです。
最初に不動産検索サイトを見るときは、見学に行くかどうかの判断材料を集めている段階なので、よりたくさんの情報が欲しいはずです。サイト利用者は、すぐに現地に行けるわけではないので、写真のクオリティが多少低くても、現地の様子がわかるかどうかが重要になってきます。
質と量の両方を提供する
話をECサイトに戻します。では、写真の点数さえ多ければいいのかというと、そういうことではありません。
同じ商品や同じカテゴリーの商品を他社も扱っている、いわゆる競合が存在するようなケースだと、写真のクオリティで差がついてしまいます。ようするに「見劣り」してしまうということです。
同じ商品を同じように撮ったとしても、クオリティの差がそのままブランドの信頼感の差につながることもあり得ます。
結論としては、「質の高い写真」を顧客が欲している情報の数だけ用意しましょう、となります。
身も蓋もない話ですが、写真も含めデザインやマーケティング戦略全体を通して、これさえあれば万事OKといった「銀の弾丸」は存在しません。競合を意識し、しっかりと顧客と向き合うことで「いい写真」をつくることができると肝に銘じておいてください。