いわゆる「写真館」では、人々が迎えた人生の節目や記念日の姿を写真に残すことを業としています。こうした写真を一般に「営業写真」と呼びますが、近年の営業写真は写真館の中で撮影するだけでなく、屋外で撮影するロケーション撮影も増えてきています。
「営業写真の撮り方見本帖」では、和装撮影をメインに活躍しているフォトグラファーの北井一大さんによる撮影の手法から心構えを伝えています。結婚式などのイベントや日常のワンシーンを思い出の1枚として残す技術と、それより先に持っておくべき考え方を学ぶことができる1冊です。
本記事ではChapter2「ジャンル別で見る営業写真の実践テクニック見本帖」より、子どもを中心とした日常の情景を撮影する際の撮影意図について解説します。
お気に入りのおもちゃとともに今しかない情景を撮る
今しか撮れないシーンを掬い上げよう
こちらの写真もお子さんの目線でとらえた1枚。家族の後ろ姿を、お子さんの背丈に合わせた低い目線で撮影しています。お父さんとお母さんに手を繋いでもらっているのは、家族の絆を表現したかったからです。両親の仲のいい姿を、子どもが見つめている、そんな視点で切り取っています。
この写真でポイントになるのが、お子さんの座っているおもちゃの車です。ファミリーフォトでは、こうしたお気に入りのアイテムを取り入れることで描写に変化が生まれますし、“このおもちゃの車、お気に入りだったな”などというふうに、当時のことを思い出してもらえるきっかけにもなります。そして、この年齢だからこそ撮れる写真になっていることも大切な要素。親御さんに挟まれて、ちょこんと座っている姿は、まさしく今でないと残すことができないのです。
Lighting Point
天候は明るい曇り空で、この場面も木の下の日陰を使い、柔らかい光質を利用しながら撮影しています。手前の家族に露出を合わせることで向こうの緑色が明るくなり、より色鮮やかに見えています。
撮影のポイント
- お気に入りのアイテムとともに撮る
- 子ども目線を意識し、低いアングルから狙う
- 絆をテーマに、親御さんには手を繋いでもらう
- 下半身のみを入れて子どもを目立たせる
- グリーンの背景で爽やかさを表現