バズる! 写真編集術
第7回

ディテールを楽しむ、明るさと色味のコントロール

他者との交流を目的としてタイムラインに写真を投稿することは、SNSの黎明期より長く行われてきました。それは自然と、SNSを写真作品の発表の場としても機能する形に進化させています。

バズる!写真編集術」では写真を発表する場としてのSNSにおいて、より多くの人々に作品の魅力を届けるための考え方と調整方法を紹介。SNSで写真が拡散される現象についての考察をベースに、個々の作品で表現したいテーマに沿った調整の具体的な手順を作例のビフォー/アフターによって伝えています。

本記事ではTYPE B「あこがれ」より、工場夜景のディテールを強調する調整方法について紹介します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

バズる!写真編集術

トレンド: #工場夜景俯瞰は究極の機能美だと思えた
工場夜景をゲームやアニメのような世界観に

Shooting Tips
この写真は屋内展望台から撮影したものです。そうした状況では室内の照明が写り込むときがあります。写り込みを抑えるためにはレンズはできるだけ窓に近づけ、さらに黒い布のような遮光物が使える場合はそれでレンズ周りを覆います。黒いジャケットやカバンなどでも代用可能です。

Before

  • ふんわりとした光で幻想的な世界観を演出する
  • 緑色の照明の色を薄い黄色へと変化させて全体の色味を統一させる
  • 明るい部分のディテールを強調してメタリックな印象を持たせる

究極の機能美ともいえるコンビナート風景。夜の訪れとともにライトが灯ればその光景は非日常性を強め、その幻想的で壮大なスケール感に思わず引き込まれてしまいます。

編集では部位ごとにバラバラな照明の色を暖色系に統一することで、非現実的な世界観をより強め、ゲームグラフィックやSFアニメのワンシーンを連想させるような仕上げを目指します。さらにマスクツールで照明が多く集まっているスポットを明るくしディテールを強調することで、闇夜に無機物が煌々と輝き浮かび上がる様子を強く印象づけていきます。

After

Sony α9 Sigma 100-400mm F5-6.3 DG DN OS(400mm)マニュアル(f8.0・1/50秒) ISO100 多分割測光 WB:晴れ/三重・四日市市 四日市ポートビル 5月15日 19時16分

写真編集のポイント

緑色の照明を大胆に補正することで工場夜景の全体的な印象を変えていきます。

基本補正: 明るさと色のバランスを整える

元写真は照明に明るさを合わせた露出で全体的に暗い状態。全体のディテールが見えるまで明るくし、次ステップ以降で暖色をメインとした仕上がりにしたいので、ホワイトバランスをやや暖色気味に調整していきます。

黄色い照明の色を判断基準にして基本補正パネルの色温度を暖色方向へ調整します。


露光量を中心に全体の明るさをプラスします。その際、明るい部分が白飛びしないようにハイライトを下げます。


テクスチャと明瞭度をプラスしてプラントのディテールを強調し、工場の複雑な造形を引き出します。

高度な補正: HSL/カラーで色彩を統一する

HSL/カラーでグリーンの色相をイエロー寄りにし、彩度を下げることで緑色の照明を薄い黄色へと変化させます。さまざまな色があることで散漫な印象でしたが、照明が黄色か橙色のみになったことで色彩に統一感が生まれます。

カラーパネルのグリーンを選び、色相・彩度・輝度を大胆に調整し、緑色を弱めて黄色に近づけます。次にイエローでバランスを微調整します。

適用前

適用後

マスク: ブラシで明るい部分のディテールを強調する

ブラシツールを使ってプラントの照明が照らす部分だけを調整していきます。明るく、ディテールを強調することで輝きを表現し、また光と陰との対比を強くして立体感を出すことでメタリックなニュアンスを強めます。

ツールストリップ>マスク>ブラシ



ブラシで照明が照らす明るい部分をマスクします。コントラストと明瞭度をプラスし、ディテールを強調させながら明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗く引き締まるようにします。

適用前
適用後

マスク: 円形グラデーションでふんわりとした光を演出

円形グラデーションを使って、仕上げに最もポイントとなる部分をさらに演出していきます。かすみの除去をマイナス方向に使用してふんわりとした明るさを再現し、プラント全体を照らすかのような幻想的な輝きを演出します。

マスクパネル>新しいマスクを作成>円形グラデーション

円形グラデーションで照明がたくさんある箇所を大胆にマスクがけし、かすみの除去をマイナスにしてふんわりとかすませます。

適用前

適用後

バズる!写真編集術

関連記事