バズる! 写真編集術
第6回

被写体の持ち味を増幅する、陰影と太陽光の調整

他者との交流を目的としてタイムラインに写真を投稿することは、SNSの黎明期より長く行われてきました。それは自然と、SNSを写真作品の発表の場としても機能する形に進化させています。

バズる!写真編集術」では写真を発表する場としてのSNSにおいて、より多くの人々に作品の魅力を届けるための考え方と調整方法を紹介。SNSで写真が拡散される現象についての考察をベースに、個々の作品で表現したいテーマに沿った調整の具体的な手順を作例のビフォー/アフターによって伝えています。

本記事ではTYPE B「あこがれ」より、明暗差が激しい夕景の調整方法を紹介します。

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バズる!写真編集術

トレンド: #天空の鳥居が見たくて1時間山登りしました
光と影を強めて明媚な夕景に仕上げる

Shooting Tips
明暗差が激しい環境での露出設定は、一番明るい部分がギリギリ白飛びしない明るさを探しましょう。太陽は必ず白飛びするため場合によってはフレームアウトも考慮します。カメラに慣れるまでは見極めが難しいので何枚か明るさを変えて撮影しておけば安心です。

Before

  • 暖色の光をより拡散させてインパクトを強くする
  • 光と陰をはっきりさせて強い西日をイメージさせる
  • 陰の暗さをキープすることで光の当たっている部分を引き立たせる

眼下に広がる街並みとともに瀬戸内海に沈む夕日を望め、さらにその光景を引き立てるように鳥居が鎮座する絶景スポット。日没直前の撮影だったため、神秘的な雰囲気を出しつつ景色と状況の美しさがより伝わりやすくなるような仕上がりを目指しました。

写真右上から照らす夕日を生かして左側に向かって徐々に変化する色彩と明暗を調整し、夕方から夜へと移ろうひとコマを再現していきます。さらに夕日を浴びた鳥居と階段が織りなす光と陰のコントラストをはっきりさせ、かすみがかった背景との対比で遠近感を出していきます。

After

Sony α7II FE 24-105mm F4 G OSS(25mm)マニュアル(f8.0・1/50秒) ISO100 多分割測光 WB:晴れ/香川・観音寺市 高屋神社 10月14日 17時22分

写真編集のポイント

夕方の暖色は柔らかい色彩表現になるよう、慎重に調整しましょう。

基本補正: 全体のコントラストと色調を整える

夕方ならではの光と陰の対比を印象的に見せるためにコントラストを高めます。また色味を日没直前の赤色に近い橙色がベースカラーになるように調整します。ハイライトの階調をしっかり残すことがポイントです。

基本補正パネルの色温度と色かぶり補正を使って(黄色とマゼンタを混ぜるように)赤色に近づけます。

コントラストと白レベルをプラスして明暗差を強調しつつ、ハイライトを抑えて被写体の色をはっきり出します。

マスク: 円形グラデーションで夕日の暖色を拡散する

夕焼けの暖色を拡散させて沈む夕日のまぶしさを表現することで写真のインパクトを強めます。その際、海のみならず写真左側の街並みまで光が届いているようにマスク範囲を広く選択することがポイントとなります。

ツールストリップ>マスク>円形グラデーション


露光量をプラスして街並みを、ハイライトと白レベルをプラスにして空を明るくし、さらにかすみの除去をマイナスして色と光を拡散させます。シャドウと黒レベルをマイナスにして暗部の明るさはキープします。

適用前

適用後

マスク: ブラシで前景を強調し存在を浮き立たせる

鳥居と階段の光と陰の明暗差を大きくすることで背景との対比をつけて遠近感を表現します。近景の色はよりはっきりと見えるため、色味を赤色に近づけて鮮やかにし、日没直前の光のイメージを強調します。

マスクパネル>新しいマスクを作成>ブラシ

色温度、色かぶり補正でより赤色に近づけ、ハイライトを下げ白レベルを上げることで日なたの色を残しつつ明るくします。10テクスチャと明瞭度を上げてディテールを強め、最後にシャドウで陰の暗さを調整します。

適用前

適用後

マスク: 線形グラデーションで階段の陰を調整する

手前の階段にかかる陰の橙色を色かぶり補正を使って取り除き、日なた部分の暖色を引き立てます。色かぶり補正によって橙色から青色のような色に変わると暗い印象になるので、明るさをキープできるように階調を調整します。

マスクパネル>新しいマスクを作成>線形グラデーション


色かぶり補正を緑色に寄せ、彩度を下げます。またコントラストを下げ、シャドウと黒レベルを上げて黒潰れを防ぎつつ露光量をマイナスします。

適用前

適用後

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