映像作品などで目にする「画面」の雰囲気は、色合いや明るさなどいくつかの要素によって演出されます。普段何気なく観ている映像作品も、よくよく見てみると登場人物の心理状態や物語の展開によって色合いが調整されていることがわかるでしょう。こうした画面の調整を一般に「グレーディング」といいます。
RAW現像ソフトなどに搭載されている「カラーグレーディング」機能は、元々映像の分野で用いられてきたグレーディングの手法を写真表現に活かす目的で取り入れられたものです。使いこなせば、写真に映画のワンカットのような雰囲気を加えることが可能になります。
「Lightroom カラーグレーディング活用BOOK」では、写真家の藤田一咲氏が、写真のカラーグレーディングを行う上で押さえておくべき色の基礎からシーンごとの作例、簡単に試せるパラメータ設定集など、写真表現の幅を拡げる知識やテクニックを多数掲載しています。
本記事ではChapter1「カラーグレーディングの基本」より、色相を円で表現するカラーホイールの見方についての解説を抜粋して紹介します。
色の配色・組み合わせ方
1. 色相の角度
カラーホイールの構造は、中央が白で放射状に使用できるすべての色が表示され、ホイールの端に向かって彩度が高くなります。
カラーホイールの色は、色相(Hue)0~360度、彩度(Satu-ration)0~100%、輝度( Luminance)0~100%の値で表します。いわゆるHSLカラーモデルを採用しており、RGBカラーモデルとは異なります。
これはたとえば、ある色の輝度のみを調整する場合、HSLカラーモデルでは輝度のスライダーのみの調整で済みますが、RGBカラーモデルではすべてのスライダーを調整しなければならないことを考えると、非常に直感的で便利です。
色相は上図のように、0~360度の角度で表されます。0度はレッドで、補色(反対色)は180度のシアンです。補色が見つけやすいのも特徴です。90度と270度を結ぶラインの右側は主に暖色、左側は寒色に分かれています。ちなみにHSLとRGBの違いは、HSLは先述の通り、色相(Hue/色の種類)、彩度(Saturation/鮮やかさ)、輝度(Luminance/明るさ)の三つの成分で色を表現しますが、パソコンやテレビのディスプレイに使われるRGBは光の三原色と呼ばれるレッド(Red)、グリーン(Green)、ブルー(Blue)の三つの原色(各256階調)を混ぜて色を表現します。表現できる色は、RGBは(256×256×256)16,777,216通り、一般的なHSLは(360×101×101)3,672,360通りと、HSLはRGBよりも少ないのですが、人間にはわかりやすい十分な数です。
カラーグレーディング方向性の比較
カラーグレーディングの方向性で写真の雰囲気が大きく変わります。最初はどうしていいかわからないこともありますが、まずは、写真をどういう色調にしたいか方向性を決めて、いろいろ試してみるのが上手くいく近道です。
下の作例は同じBEFOREにカラーグレーディングで、AFTER_1はバイオレットを強調した暖色系、AFTER_2はブルーを強めた寒色系に。メインの色の選択でまったく違った印象の写真になっています。
各AFTERのグレーディングパネル。ともに、ハイライトとシャドウは補色の配色
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