ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第35回のテーマは「食器」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 見た目や触感を直に感じ、撮影イメージに生かす。
2. 食器の撮影で一番大事な要素は「光の見極め」。
テーブルの上の水差しを撮影しました。光は当然大切ですが、ガラスのような透明なものを撮る時は、背景にあるモノや色も大切です。バックが白すぎるとガラスの質感が出ないので、黒っぽいものを写り込ませたりする方が有効です。
質感を感じ食器ごとに撮り分けたい
写真をやっていると「質感」という言葉によく出くわしますが、それをもっとも実感するのが食器を撮っている時です。ガラスの透明感、磁器のツルツル感、陶器のザラザラ感、銀食器のメタリック感…。食器は実に様々な質感を持っています。目の前にある食器の質感は一体どういうものなのか? 目で見たり、実際に手で触ってみたりして自分なりに感じ、それを撮り分けていくのが、食器撮影の醍醐味なのではないかと思っています。
食器の撮影は光の勉強に最適
食器を撮影する際に最も大切なことは「光」だと思います。食器の質感を一番際立たせることができる光はどういうものなのか? そして、順光、サイド光、逆光…さらには、光の形、一体どれが目の前の食器をしっかりと描写できるのか、常に考えましょう。例えば、銀食器のメタリックな感じは、スポットライトのようなものの方がよく出たりします。光源を動かせない時は、自分が動いて最適な光を探しましょう。食器の撮影は光の勉強にはオススメの被写体です。
白いコップのつるりとした感じが可愛いと思いました。ピンクのバケツに入っていたので、白さが強調されたように思います。白いバケツに入っていたら、あまりコップが目立たなかったかなと…。
熱いお茶の入った湯呑を撮りました。逆光を使い、湯呑のつるりとした輪郭が際立つようにしました。また、立ち上る白い湯気もしっかり描きたかったので、背景にちょうど茶色の壁がくるアングルを選びました。
テーブルに置かれたフォークとナイフがきらりと光る様子がうつくしいと思いました。ハイライトがピカっと光る様子がいいなと思ったので、それを強調するため、あえてハイライトがにじむレンズ(レンズベビー)を装着しました。