ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第34回のテーマは「波」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 白波の立つ海原全体を眺め、バランスのよい瞬間を切り取る。
2. F8以上に絞り込み、35mmより広い画角のレンズを使う。
荒っぽく打ち寄せる波を35mmで撮影しました。カラー写真ですが、完全に「黒」と「白」の視点で目の前の光景を捉えるようにしました。白い泡がフレームの中でバランスのよい配置になった瞬間にシャッターを切っています。F16まで絞ったので隅々までピントが合い気持ちがよい作品になりました。
「黒」と「白」のデザインとして視る
黒っぽい水面と、その上に広がる白い泡。波は「黒」と「白」の視点で眺めると、全く別のものに見えてきます。私は波を撮影する時に、絶対に一点だけを見つめないようにしています。フレーム内に、白い波がどのように分布しているか。それをデザイン的な視点で把握することだけに集中します。バランスがいい、と感じた瞬間にシャッターを切ると面白い絵になることが多いです。自然がつくりだす一瞬のデザインを写真に収める気持ちで臨みましょう。
広角レンズで絞り込んで撮影する
昔は、波を撮る時に絞りは開放にしていたのですが、絵がモヤっとして気持ち悪いと感じることが多くありました。絞って撮影するようになってからはその気持ち悪さが解消されたので、最近はF8以上に絞ることがほとんどです。絞ると、水面と泡が隅々まで描写されて抜けがよく、気持ちよい絵に仕上がります。また、波の一部分ではなく全体を収めた方がダイナミックで面白いため、35mmよりも広い画角のレンズを使うことが多いです。
浜に打ち寄せる波の形に注目することもあります。白い砂浜を分断するような波の形状が面白いと感じたので、画面の半分を砂、半分を波、という構図にしました。
打ち寄せる…ではなく、「引いていく」波が残す泡がきれいだったので、思わずシャッターを切りました。そこに残された一枚の葉が印象的だったので、葉の存在感を強調するために絞りは開放にしました。
真冬、池に浮かぶ落ち葉を波がゆさぶり、その光景がなんとも物悲しい雰囲気でした。モノクロにするよりも、彩度を思いっきり下げたフィルターを使用した方が物悲しく見えたので、そうしました。