オールドレンズ・ライフ
第20回

【オールドズームレンズ特集】しっかり写るヘビー級「オールドズーム」 Tele-Variogon 80-240mmF4

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つなのです。

オールドレンズ・ライフ 2019-2020」では、オールドレンズの中でもあまり注目されてこなかった「オールドズームレンズ」を特集。一筋縄ではいかない性能や個性的な外観には、現代のレンズとは一味も二味も違う面白さがあります。

本記事ではその中の一つ、Tele-Variogon 80-240mmF4の作例と解説を掲載します。

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オールドレンズ・ライフ 2019-2020

真面目に使える望遠ズーム

派手なゼブラ柄がいかにも1960年代のレンズらしい佇まいだ。

シュナイダーは理知的な描写のレンズを得意とする。クセノン50ミリF1.9はその冴えたる例だ。ツァイスのプラナーを文系とするならば、シュナイダーのクセノンは理系である。そんなシュナイダーが手がけたテレバリオゴンは、案の定理系テイストの望遠ズームだ。

同社はズームレンズをバリオゴンの名で世に送り出してきた。テレバリオゴンはその名の通り、望遠ズームという位置付けだ。本レンズが登場した1960年代後半は、ズームレンズ史上の比較的早い時点にあたる。にも関わらず、全域でF4通しという贅沢なスペックを誇っていた。

見方を変えると、スペック重視で設計に無理があったのではないかと邪推したくなるが、それは杞憂だ。実写すると、開放はやや柔らかいものの、絞ると繊細さを保ちながらシャープになる。オールドズームは歪曲収差が目立ちがちだが、このレンズについてはあまり気にならない。さすがはシュナイダー、至って理知的な望遠ズームである。

機構面では着脱式のピストルグリップが目を引く。ケーブルでグリップとカメラ(オリジナルボディ)をつなげると、自動絞りで撮影できた。大きく重量のあるレンズだが、ピストルグリップが多少はレンズの重さを和らげてくれるだろう。

大柄なレンズのため、ピストルグリップが付属する。引き金でシャッターが切れた。
ねじ込み式のフードが付属する。逆光耐性はまずまずのレンズだ。
側面のレバーで絞りをコントロールする。のぞき穴で絞り値が確認できる。
鏡胴の中程にストラップ穴を装備する。ヘビー級のレンズならではの仕様だ。
ズーミングしても鏡胴は伸縮しない。
α7III + Tele-Variogon 80-240mmF4 絞り優先AE F4 1/1000秒 ISO100 AWB RAW 240mm 河原の自転車に開放でピントを合わせる。パープルフリンジがあるものの、滲まずにシャープな描き方だ。

ワイド端80ミリ、テレ端240ミリの3倍ズームだ。歪曲収差が少ないので、どの焦点距離も思いのままに使える。建築物の撮影でも安心だ。

Wide: 80mm
Tele: 240mm
α7III + Tele-Variogon 80-240mmF4 絞り優先AE F5.6 1/400秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 240mm ズームとは言え大味になることなく、外国人カップルを緻密に捉えている。発色はやや地味な印象だ。
Tele-Variogon 80-240mmF4 中古価格:50,000~100,000円 M42 mount 1968年に登場した望遠ズーム。レンズ構成は9群14枚で、最短撮影距離は1.8メートルだ。M42の他、アルパ、ライカRマウントなどがある。
KF-42E2 税別価格:3,500円 M42マウントレンズをソニーEマウントボディに装着。レンズ指標位置の調節が可能だ。

オールドレンズ・ライフ 2019-2020

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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