オールドレンズ・ライフ
第19回

開けて個性派、絞って堅実、オールドレンズの醍醐味をお手頃価格で Biotar 5.8cm F2 T

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。

本記事ではその中のひとつ、「Biotar 5.8cm F2 T」の作例と解説を紹介します。

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狙い目は過渡期の大口径レンズ Carl Zeiss Jena「Biotar 5.8cm F2 T」

α7II + Biotar 5.8cm F2 T 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO100 AWB RAW 逆光はフレアが出やすい。絞り込んでビーム状のフレアを味わう。色付いた葉を緻密に描いている。

標準レンズのクセ玉は、いわゆる大口径タイプが主流だ。明るい標準レンズは開放で甘さが残り、それがレンズの個性として珍重される。オールドレンズ好きなら一度は試したいレンズである。惜しむらくは、大口径標準レンズは総じて値が張ることだ。

そこでマニアが目を付けているのは、過渡期の大口径標準レンズである。現在の感覚だと、F1.2~F1.4が大口径標準レンズのスペックだ。しかし、1940年代から1950年代の標準レンズであれば、F2クラスが大口径レンズだった。ここで取り上げるビオター5.8cm F2 Tも、戦後まもなくの大口径標準レンズである。

本レンズは、スタンダードクラスのテッサー50mm F2.8に対し、大口径クラスという位置付けだった。開放はシャープネスが甘く、滲みやぐるぐるボケも出やすい。当時のレンズとしては明るさを欲張っているため、開放F2という控えめなスペックの割りにクセの強い描写だ。手頃な価格の標準レンズだが、オールドレンズらしさをたっぷりと楽しめるだろう。

その一方で、堅実さも備えているのがこのレンズの良さだ。F4あたりまで絞ると、実にまっとうな写りになる。四隅まで解像し、コントラストも良好だ。安価なレンズだが、クセと堅実描写のバランスが良い。

α7II + Biotar 5.8cm F2 T 絞り優先AE F5.6 1/350秒 ISO100 AWB RAW 本レンズは甘い描写に注目が集まりがちだが、絞った時の堅実さも見事だ。シャドウの締まりが良く、歪曲もほぼ感じられない。
Biotar 5.8cm F2 T 中古価格:20,000~35,000円 Exakta mount 戦後から1950年代にかけて製造された大口径標準レンズ。4群6枚のダブルガウス型だ。17枚羽根という贅沢な円形絞りを採用していた。
EXA/TOP-SαE 税別価格:19,000円 エキザクタマウントのレンズをソニーEマウントボディに装着する。トプコン(エキザクタ互換)マウントレンズもサポートしている。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura


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