被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。
「四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。
本記事では「四季の空を撮る・夏の空」の章より、「雨の王冠」の作例を抜粋して紹介します。
雨の王冠
水たまりに大きな雨粒が勢いよく落ちると、王冠の形をした水しぶきがあがる。シャッター速度を上げてその瞬間を切り取ってみよう。
たくさんの雨の王冠
複数の雨の王冠が写っているが、それぞれ形が異なっている。雨粒が地面に落ちてからの時間や、その大きさ、水たまりの深さなどが影響している。
水たまりに雨が落ちると、水しぶきがあがる。そして、水たまりに適度な深さがあり、大きな雨粒が勢いよく落ちてくると、王冠の形をした水しぶきを作り出す。夏のにわか雨など、強い雨が降る時が狙い目だ。王冠は、雨粒が落ちてきてからの時間や、大きさ、水たまりの深さなどによって多彩な表情を見せるが、意外と発生する条件が揃わないため撮影できるチャンスは少ない。雨の中での撮影となるため、足元やカメラが濡れないように注意しよう。
王冠と水しぶき
雨の王冠のまわりにたくさんの水しぶきが飛んでいる。水しぶきは撮影者やカメラに跳ね返ってくることもあるので、車の窓から撮影するのもいい。
雨の王冠を撮影するには、シャッター速度を上げる必要がある。1/1000秒を目安にするといいだろう。暗い雨天時にシャッター速度を上げることで、感度も上げることになるが、絞りは開放にするとピントが合いにくいので、少し絞って撮影しよう。なかなか思った通りの場所に大きな雨粒は落ちてこないので、たくさん撮影して後から写真をセレクトするのもいい。雨水よりも牛乳の方が、なめらかできれいな王冠(ミルククラウン)を作るので、比較してみよう。
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