写真にハマっているアマチュアにとっては、「テーマはどんなものにすればよいか?」「撮影方法はどうすればよいか?」「上手に写真を撮るためには?」など、本気になればなるほど、堅く考えてしまうものです。そんな人達に写真家の丹野清志氏は、著書「ニッポンぶらりカメラ旅」の中で、肩ひじはらずにカメラを持ってふらっと旅をして、思いつくままに写真を撮ることを勧めています。「町から町へ、なりゆきまかせで移動していくと、いろいろな出会いがあり、出会いの一つ一つに心がふるえるのです。」と言います。
そんな心をふるわせる被写体に出会える旅はどうしたらできるのでしょうか?
本記事では、第2章「旅の写真を楽しむためのヒント」からのアドバイスをご紹介します。
絞り優先はボケ味の選択
傑作をねらう露出モードは、絞り優先が常識とされてきました。絞り値で変化する被写界深度による描写の変化を作画にうまく利用せよ、ということです。写真作法として絞り優先で撮るケースは、美しいボケ味が「作画」のポイントになるポートレートや静物や花などの撮影、そして絞り込んで撮るのが基本の風景写真。特に意識するのは絞り開放寄りが鉄則のボケ描写でしょう。よいボケ味を求めるなら、絞り値の選択だけでなく、撮像素子の小さいAPS-Cやマイクロフォーサーズタイプは35ミリ判フルサイズカメラより被写界深度が深くなるので、一眼レフと大口径レンズの組み合わせがベストとなります。
ぶらりカメラ旅写真の対象はあらゆる被写体ですから、風景や花やポートレートも撮ります。が、旅で撮る風景写真はスナップする感覚で見る「風景」ですから、絞り開放寄りで撮る、スローシャッターで撮るといった作画技法にこだわる撮影は少なく、カメラもフルサイズと大口径レンズ必携でなくてもいいのです。
私流ぶらりカメラ旅でのボケ味は、食べ物で言えば高級料理ではなく駅前食堂の定食ぐらいの感じが得られればいいのではないかと考えてます。ちなみに、ぶらりカメラ旅での標準〜広角レンズでの最適絞りは、F5.6〜8でしょうか。
もやもや画像の原因は手ぶれ
撮影後に液晶モニターで画像を確認すると思いますが、よほど露出オーバー、アンダーの画像でなければ鮮やかな色彩画像です。ところがパソコンで拡大して見るとシャキッとしない画像だ、ということがありませんか。
スッキリしない画像の原因はピントがあまいのではなく、カメラぶれ、手ぶれです。デジタルカメラではこの手ぶれが多いことから、風景写真では三脚必携とされていて、重量のある交換レンズには、手ぶれ補正装置がついています。ぶらりカメラ旅は、基本的に手持ち撮影ですから、とにかく手ぶれは要注意です。
ぶれといえば、激しくぶれた画像にその場の臨場感が感じられて面白い効果をあげるケースもありますが、単純な手ぶれはいただけません。という理由から、ぶらりカメラ旅では手ぶれなしを第一に考えて、シャッター優先での撮影法をおすすめします。デジタルカメラのAF機能はピントをビシッと決めますから、ピントより手ぶれです。
シャッター優先にすれば絞りは開かれるので被写界深度が浅くなりますが、デジタルカメラの描写は鮮明で、特にAPS-Cサイズとマイクロフォーサーズタイプのデジタルカメラは被写界深度が深いので、絞りが開放側になっても鮮明な描写が得られるのです。