光と影の処方箋
第7回

風景写真のフレーミングについて〜ナショナルジオグラフィックのカメラマンが語ったこと〜

写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?

本記事では、第1章の「Plants(植物)」の中から、風景写真を撮る上でのフレーミングについてご紹介します。

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APS-Cサイズカメラ 16mmF1.4 F9 25秒 ISO400 WB:晴 天 オーストラリア・タスマニア州クレイドルマウンテン

フレーミングは数ミリ単位で考えろ

〔 撮り方 〕
夜明け前の原生林。森の深い奥行き感を出すために森の奥まで見通せるポイントに行く。

森の姿が雑然としないように、それぞれの木の重なりと繋がり具合をどうするか考えた。手前の木2本と奥に横たわる木の位置を調整すると、さらに奥の斜めの木、画面奥に立っている木がうまくつながらない。変化する光を前に焦る気持ちを抑えながらの作業となった。

この奥行き感出すにはパンフォーカスとなるので広角レンズの選択となるが、少しでもF値の明るい単焦点の広角レンズが良い。単焦点の方がより最短撮影距離が短いのと、よりクリアな画質が得られるからだ。風景には、決めの広角単体レンズを持って行くことをおすすめする。

 

〔 処方箋 〕
ある伝説の写真家と仕事をしていたとき、彼に記念写真を撮ってもらう機会があった。カメラはコンデジだった。彼はカメラを構えると、数ミリずつカメラを細かく動かしてフレーミングしていたのだ。どうしてそんなに細かくカメラを動かすのか、僕は尋ねた。すると彼は、携帯電話を出して、撮ったお孫さんの写真を見せてくれた。桜並木をバックにした女の子のお孫さんの写真だ。でもそれは単に記念写真ではなく、まさにナショナルジオグラフィックの表紙の写真のようだった。彼の名はBluce Deal。ナショナルジオグラフィックのレジェンドだ。その数ミリ単位で動かして撮られただろう記念写真は、桜並木の木々の重なり具合とお孫さんの立ち位置、彼女の笑顔はいうまでもなく完璧なものだった。

そのとき自分のフレーミングの甘さを痛感した。完璧さを求めるならばフレーミングはミリ単位で探すこと。これを肝に銘じたのだ。

 


<玄光社の本>


「光と影の処方箋」

著者プロフィール

相原正明

1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影ツーリング以来かの地でランドスケープフォトの虜になり、以後オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。以後写真展はアメリカ、韓国、そしてドイツ・フォトキナでは富士フイルムメインステージで個展を開催。また2008年には世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在写真家であるとともにフレンドオブタスマニア(タスマニア州観光親善大使)の称号を持つ。パブリックコレクションとして、オーストラリア大使館東京およびソウル、デンマーク王室に作品が収蔵されている。また2014年からは三代目桂花團治師匠の襲名を中心に落語の世界の撮影を始める。写真展多数。写真集、書籍には「ちいさないのち」小学館刊、「誰も言わなかったランドスケープ・フォトの極意」玄光社刊、「しずくの国」エシェルアン刊。


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