写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?
本記事では、第3章の「Water(水)」の中から、風景写真を撮る上でそろえたいレンズについてご紹介します。
レンズは揃えろ! 気持ちだけでは写真は撮れない
〔 撮り方 〕
無数の立ち枯れの木が並び、霧が出やすいこの湖は、タスマニアのお気に入りポイント。
撮影焦点距離はAPS-Cサイズカメラの280mm相当。まずしっかりした三脚と、少しでもぶれを防ぐために電子シャッターを使用。5本の木を並べて、センターの木を中心にシンメトリーな構図を作り上げた。次に5本の木の後ろの霧がどのように動くかを見極めながらシャッターを切った。
特に霧とバックの森の位置関係が大事になってくる。露出は湖面と霧が重くならないように少し+に補正したが、+1.5EV くらいまでブラケティングして撮っている。また色は、仕上がり設定の人肌モードの彩度を+1~2で調整し、朝の鮮やかさが出るようにした。色温度はマニュアルで設定。朝の青味が残りつつ、やや赤味が差すところを探した。
〔 処方箋 〕
写真を撮るならば標準レンズさえあれば充分という考えがある。それは間違いではない。ただ撮影分野によっては、レンズを揃えなければ撮れないことが発生する。
正直にいえば、心のままに撮りたいのならば、風景では16~400mm(35mm 判換算)の焦点域をカバーするレンズが必要だ。この作品のように近づけない場合は超望遠系ズームがなくては話にならない。以前、20~300mmの焦点域で撮影を行ったときは、満足のいくアングルを撮り逃してしまった。
レンズを揃え、レンズを使いこなすことで自分の世界が撮れるのなら、無理をしてでも揃えたほうが良い。もしプロになろうと思うならばなおさらだ。そして購入資金は必ず取り返す信念を持つことだ。
<玄光社の本>