光と影の処方箋
第5回

夜間撮影するには自分の機材を熟知して体の一部とする

写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?

本記事では、第2章の「Earth(地球)」の中から、夜間撮影の心構えをご紹介します。

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フルサイズカメラ 25mmF2.5 絞り優先AE(F4・10秒) 
ISO1600 WB:白熱灯 北海道・十勝 大津海岸

 

夜間撮影するには自分の機材を熟知しろ

〔 撮り方 〕
2月の深夜、十勝の海岸。気温は-25℃。月光で輝くジュエリーアイスを狙った。撮影前の最初の準備は月齢の確認。僕は月齢にあわせて撮影予定を1年間組んでいる。

次に寒さに強い機材の選択。極寒の地では、ミラー式一眼レフは、バッテリー消費が少なく寒さに強い。明るい単焦点広角レンズを装着して、ヘッドライトで氷を照らしながらMF撮影。夜間撮影したい場合は、MF操作がしやすいレンズとカメラボディを選択すべきだ。

同時に普段自分の機材に熟知しておくことが、暗所での手探り撮影の効率化と作画に集中できる秘訣だ。ISO感度は氷の質感も出したかったので、画質優先で少し低めの1600にした。

 

〔 処方箋 〕
いくらデジタルカメラが進化して、起動時間が0.01秒とか、AF合焦速度が0.1秒とかいっても、撮影の設定や機材の操作に手間取っていては、何十秒あるいは何分もかかってしまう。そうなっては素早い起動時間やAFは何の役にも立たない。体の一部として機材が使え、あるいは機材の一部に自分がなるくらい使い込まないと良い作品は生れないのだ。

撮影のときに、機材操作が頭の中をかすめていては、構図や光に意識を集中することは不可能だ。だから、新し物好きで機材を頻繁に変更するのはとても怖い。万に一つの光のチャンスに出合っても、体が機材を覚えていないと撮り逃すことがある。

プロトタイプの機材でメーカーのテスト撮影をするときは、何でも撮って少しでも本番撮影までにカメラを体の一部にしようと練習している。失敗は失業。開発プロジェクト全員を裏切り、努力を無駄にさせることになってしまうからだ。

 


<玄光社の本>


「光と影の処方箋」

著者プロフィール

相原正明

1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影ツーリング以来かの地でランドスケープフォトの虜になり、以後オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。以後写真展はアメリカ、韓国、そしてドイツ・フォトキナでは富士フイルムメインステージで個展を開催。また2008年には世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在写真家であるとともにフレンドオブタスマニア(タスマニア州観光親善大使)の称号を持つ。パブリックコレクションとして、オーストラリア大使館東京およびソウル、デンマーク王室に作品が収蔵されている。また2014年からは三代目桂花團治師匠の襲名を中心に落語の世界の撮影を始める。写真展多数。写真集、書籍には「ちいさないのち」小学館刊、「誰も言わなかったランドスケープ・フォトの極意」玄光社刊、「しずくの国」エシェルアン刊。


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