「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第15回のテーマは「工具」。金属の輝きや照り返しの色を作品として表現する際には、目立たせたい部分だけを強調する工夫が必要です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 工具の持つ「輝き」と「色」の強調だけを意識する。
2. 「 輝き」と「色」を際立たせるには、コントラストが重要になる。
自動車の修理工場に行った時、大きな引き出しの中に、車の修理に使うパーツがたくさん仕舞われているのを発見しました。横一列に並んだ円形のメタリックな輝きがきれいだと感じたので、そこを写したいと思いました。カメラの設定でコントラストを高くして、明るい部分と暗い部分の差をつけ、円形の輝きがより目立つように撮影しました。
心惹かれるポイントだけを強調
工具を撮影する時、私は必ず「いいな」と思ったポイントだけを強調するようにしています。その方が感じたことをより明確に伝えることができるからです。
振り返って考えてみると、自分が工具に対して「いいな」と思うポイントは、だいたい以下の2つです。それは「輝き」と「色」。ネジやボルトの硬質でメタリックな輝き、絡まったコードのカラフルな色合い、溜まった油の妖しげなレインボーカラーの反射…そうしたものにいつも心惹かれます。
コントラストをつけるのがコツ
工具の「輝き」と「色」をシンプルに表現するには「コントラスト」をハッキリとつけることが大切だと思っています。そうすると、光っている部分がより際立ち、目立たせたい色がより強調されるからです。まずはコントラストの高い場所での撮影が重要ですが、カメラの設定や、撮影後の現像で調整してもよいと思います。オリンパスのカメラに搭載されている、トーンカーブを液晶モニタで調整しながら撮影できる「ハイライト&シャドウコントロール」はとても便利です。
こちらも自動車の修理工場にて、何に使われているのかはまったくわからないのですが、何かの配線が複雑に絡み合っていました。黒っぽいコードの中に、ところどころ黄色や緑や紫といったカラフルなコードが覗いているのが可愛いと思いました。コントラストを高めて、そのカラフルなコードだけを強調してみました。
工場の床に散らばった工具や、何かのパーツを撮影しました。影になっている部分から明るい方へ向かって、工具やパーツが散らばっていて、その奥行き感がいいなと感じました。そこで、絞りを開放にして、ピントは手前に合わせ、画面の奥に向かって工具がぼけていくように写しています。
工場にて、アルミの容器に入った油のようなものが、虹色に光っているのを見つけました。CGかと思うくらいにカラフルで綺麗だったので、思わずシャッターを切りました。油面の色を強調するため、カメラの設定で彩度を高くしました。