「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第14回のテーマは「雪」。様々に形を変える雪を作品レベルで被写体とするには、構図の作り方やシーンの選び方、カメラ設定にも工夫が必要です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 雪の状態と、撮影イメージに合わせて、様々な撮影技術を駆使する必要がある。
2. シャッタースピード、露出はもとより、光の方向や背景の色にも気を配る。
北海道にて、吹雪の夜を撮影しました。空を舞う雪の粒を「少し動きのある状態」で写したいと思ったので、シャッタースピードは、雪の粒が完全に流れない程度に写る1/45秒にしました。そして背景に街灯がある場所を選び、逆光にして雪の粒のエッジを際立たせました。夜だったので、背景が黒っぽく、白い雪の粒が際立って見えました。個人的に吹雪は、夜、街灯の前で撮るに限ります。昼間は背景をかなり選ばないと、雪が背景に溶けてしまうからです。
様々な雪の形態に対応する
個人的に「雪」は撮影するのが非常に難しい被写体だと思っています。なぜなら、雪は状況によって形が異なるからです。荒々しく吹雪いている時もあれば、硬く凍っていることもあり、また静かに大地を覆い尽くしていることがあるかと思えば、粉のように柔らかくふわふわと舞っていることもあります。その変幻自在な雪の姿をイメージ通りに捉えるには、様々な撮影技術の基礎を身につける必要があります。思い通りに撮れたのなら、自分を褒めてあげてよいと思います。
カメラはマニュアル操作で
雪の「動き」に注目するのであれば、シャッタースピードの調整が必要です。また、雪の「粒」を見せたいのであれば、逆光にして粒のエッジを出し、かつ雪の色が溶けてしまわないような背景色の場所を選ぶ必要があります。さらに、白っぽくて明るい雪は、オートだと暗く写りがちなので、露出補正をして肉眼で見たものと同じような明るさに調整する必要があります。雪の撮影では以上のことに気をつけなければならないので、カメラのマニュアル操作は必須です。
溶け始めた雪の上に落ちている枝を撮影しました。一面が真っ白すぎると味気ないと感じたので、空の青さが水面に映り込む位置までアングルを下げ、画面全体に青みを足しました。
天井がガラス張りになっている場所に、雪が積もっているところを撮影しました。ところどころ丸く、全体的に見ると模様のようになっているところがファンタスティックでいいなと思いました。幻想的な感じを出すために、被写界深度を浅めにして、合焦部以外をややぼかしました。
雪の積もった山肌と、湖の青さのコントラストが美しいと思ったのでシャッターを切りました。山も湖も写したかったので、絞りをf11にして両方にピントが合うようにしました。