赤城写真機診療所
第1回

カメラ科・症例:カメラを何台も買ってしまう病気

赤城写真機診療所 ~そんなカメラは捨てなさい~」では、カメラや撮影にまつわる悩みや迷いを「疾患」に見立て、「カメラ科」「レンズ科」「撮影科」「アクセサリー科」それぞれのカテゴリーで、質問を「症状」、回答を「診察」としてカメラや写真、撮影時の疑問に答えています。

「診察」と銘打ってはいますが、要は著者によるお悩み相談。「カメラあるあるネタ」に対する著者の見解を楽しむ一冊となっています。

本記事では「カメラ科」における診察内容の1つを抜粋してお届けします。


どうして何台もカメラを買うのですか?

この病にはふたつのタイプがある。まずひとつは出来上がった写真が不満足だとこれをカメラのせいにしてしまう、「新型カメラ依存症」だ。現代のデジタルカメラにおいてはおよそ二世代くらい前までの機種ならば、巷で言われるほど機能や画質の差はない。プロにとって、カメラは設備投資のひとつにしかすぎない。そのモトを取らねばならないので平気で型落ちのカメラを使っていたりする。真面目なカメラマンはカメラ雑誌の新製品掲載記事やレビューは一切読まないので、新型カメラにどんな機能があるかなどまったく気にしていない。カメラは写真を撮る道具と割り切って考えれば、これまでよりもいい写真が撮れそうな新型カメラでも気にならなくなるものだ。

ただ、プロは自分に絶対に必要なものだと考えれば借金しても購入する覚悟があるし、予備カメラもないといざというときに困るのでカメラが増えてしまうこともあるが、これは職業柄やむをえない。新型カメラを気にしているのはアマチュアの人たちで、カメラメーカーには大切なお客さまだが、賢い写真表現者はあえて型落ちの廉価なカメラを購入して楽しんでいたりする。

もうひとつ考えられるカメラが増える病は、ココロのスキマをカメラで埋めようと考えている「カメラ大量購入病」である。さまざまな症例が報告されているが、まず初期段階では、廉価なカメラでも買い続けることで一旦は収束するようにみえる。ところが病気は心の奥深くまで進行していることがあり、悪化するとライカを生涯をかけてコンプリートしようなどと危険な思想を持ってしまう。こうなると私財を投げうち、人生を棒にふってしまう可能性すらある。恐ろしい病である。こういう人はカメラ以外にも楽しみを見つけるとか、スポーツに打ち込むとか、早く恋人を作るとかしたほうがいい。

人間の目はふたつ、腕も二本しかない。カメラを大量に持っていても、一度に使うことは不可能である。基本的に写真の内容とカメラのタイプ、クラスはまったく関係ないことも自覚するべきである。三流のメカニズムライターの言うことなど気にする必要はない。

は?「おまえに言われたくない」というクレームは認めていません。

 写真+イラスト:大村祐里子

赤城写真機診療所

この連載の他の記事を読む

続編「赤城写真機診療所 MarkII」(2018年6月29日発売)


著者プロフィール

赤城 耕一


(あかぎ・こういち)

1961年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学写真技術科卒業。出版社を経てフリーに。雑誌、コマーシャル、企業PR誌などで人物撮影を主に担当する傍ら、戦前ライカから最新のデジタルカメラまでレビューも行うカメラ好き。カメラ雑誌、書籍など執筆多数。
「銀塩カメラ放蕩記(アサヒカメラ)」「ボケてもキレても(月刊カメラマン)」連載中。

書籍(玄光社):
中古カメラはこう買いなさい!
ズームレンズは捨てなさい!

Twitter:@summar2
ブログ:赤城耕一写真日録


関連記事