「コマーシャル・フォト2018年5月号」では、巻頭で操上和美さんの特集を組んでいます。1966年のデビューから52年経った今なお、第一線で活躍しているフォトグラファーです。特集は、これまで数多くの広告写真や作品を撮り続けてきた操上さんの人生を深掘りする内容となっています。本記事では、特集内で行ったインタビューの中から、「作品を撮ること」について抜粋してお届けします。
撮ることは常に楽しい
写真を撮ることは常に楽しいです。どんなに暑くても寒くてもほっつき歩くしね。ただ、そこでなにかをつかまえてやろうというのではなくて、遭遇する面白さ。自分が何にリアクションするのかというのが面白いですね。何にもリアクションしなくなったら終わりですから。撮っている時はただ「面白い」と思っているだけです。
今渋谷を撮って連載していて、あれも作品と言えば作品。そんな難しく考えてはいなくて撮りたいものを撮っているだけ。いわゆる広告とか雑誌のような仕事としての写真と自発的に撮るもの。簡単に言えばスナップショットに近いもの。
それはポートレイトも含めて、写真に自分の生き様が出ていればいいかなと考えています。頑なに決めて「これは作品だ」とか、そういう生き方をしていないので、これは作品、これは仕事とは分けることもないですね。撮りたくなったら作品らしきものとしてまとめることもある。
日々歩きながら撮っているものも作品と言えば作品。自分の写真家生活そのものが作品になっていくのが一番いいかなと考えています。
カメラにはこだわらない
いつも首からライカを下げていなくちゃいけないとか、そういうことではなくて、撮りたいと思ったときに撮れるカメラがあればいい。雑誌「GQ」の連載でもiPhoneで撮った写真も発表しています。実を言うと写真家になりたての頃からカメラなんてなんだっていいってことに気が付いていました。西武百貨店のポスターでもおもちゃカメラで撮ったことがあります。砂漠で何十人もエキストラを用意して、クレーンの上からハッセルで撮った。でも最後にポケットからおもちゃカメラを出して撮ったらみんなのリアクションが違う。不思議なものを見たみたいな顔して面白がっている。最終的にそのカメラで撮った写真を使いましたよ。
写真を撮るのは気楽なことではない
時代はどんどん変わります。写真家にとって面白い時代を生きてこれたと思いますし、その中でいろんなものを吸収することができた。今思うのは時代に合わせていると自分の感覚が狂って、流されてしまう。時代の感覚を受け入れつつ、自分の軸を通すための戦略も必要になってくる。
インスタグラムは写真に対する反応が早いのが面白いですね。写真は展覧会を開くか、本にしたり、ポスターを作ったりするしか発表の機会がなかったんだけど、21世紀になってiPhoneやインスタグラムが出てきた。なにかを発信するにはとてもいいメディアじゃないですか。今見たもの、感じたことを即発信できるなら、もうそれでいいんじゃないかとも思う。
写真を撮るということは気楽なことではない。自分に欲望とエネルギーがあれば、撮り続けられるだろうと思うし、どんどん前にいけるはずだと信じています。
コマーシャル・フォト 2018年5月号 |