デジタルカメラで撮影した写真を「作品」として出力する際には、用紙選びからプリント面と画面上の色のマッチング、画像処理ソフトによる仕上げにいたるまで、留意するポイントがたくさんあります。それらの過程はすべて、写真を「作品」として仕上げるために必要な過程です。
写真家・岡嶋和幸さんの著書「ファインプリントのための撮影&RAW現像ガイド」では、写真を作品として仕上げ、ファインプリントとして成立させるためのノウハウをわかりやすく解説しています。
本記事では、チャプター1「ファインプリントのための基礎知識」より、露出を調整する際の留意事項について掲載します。
ちょうどよい明るさで撮影する「適正露出」から卒業しよう
ハイライトの白飛びやシャドウの黒つぶれは、明暗差の少ないシーンでは起こりにくいです。でも大きなシーンではどちらか一方、あるいは両方が起こりやすくなります。この場合、露出を調節することでどちらかをなくすことはできますが、被写体がイメージする明るさにならないこともあります。
その度合いにもよりますが、プリントはパソコンのディスプレイで見るより白飛びや黒つぶれが気になりやすい傾向です。それらが被写体や主題となる部分で起きていたり、背景などでも面積が広めだとかなり目に付いて不自然に感じられます。これは彩度が高すぎて色飽和を起こしている部分も同様です。
ライティングや画面構成を自由にコントロールできるスタジオ撮影であれば、ヒストグラムなどを確認しながらバランスよく仕上げることが可能です。でも、屋外での一般的な撮影では光を選んだり露出を調節するほか、避けたい白飛びや黒つぶれが画面の端にある場合は、それらが入らないような構図に変更するといった判断が必要になります。
ファインプリントを目指すのなら、画像処理を踏まえて適正露出で撮影することがポイントです。画面全体や被写体がイメージより明るめ、あるいは暗めになってしまいますが、白飛びや黒つぶれをなくしたり、その割合を軽減するような露出調節を心がけます。それにより明るくなったり、暗くなった部分をどのように画像処理でカバーするのかを計算に入れながら撮影するのです。そのためには画像処理ソフトでの調整方法を頭の中に入れておく必要があります。
ヒストグラムとは?
ヒストグラムとは画像の明るさの分布を示したグラフのことです。撮影や画像処理で露出などを判断するときの目安になります。ヒストグラムの横軸では画面内の明るさが数値化されていて、右側はハイライト部分、左側はシャドウ部分を表します。縦軸はその明るさに対しての画素の数です。これにより画面内の明暗や濃淡の状況を読み取ることができます。白飛びや黒つぶれの存在を確認することはできますが、それが画面内のどの部分にあるのかはヒストグラムでは分かりません。それらはハイライトやシャドウの警告機能で確認できます。
白飛びや黒つぶれをなくしてプリントに必要な情報を写し込む
撮影と画像処理のどちらもヒストグラムを確認しながら行うことが大切です。セレクトのときも、画像処理やプリントに適した画像データであるのかどうかを見極めるためにヒストグラムを確認しましょう。これらの作業を積み重ねることでヒストグラムが読めるようになり、撮影時の露出や画面構成の判断、画像処理の組み立てなどが的確にできるようになります。
白飛びを軽減する
ヒストグラムの山裾が右にはみ出していると白飛びがあり、その部分は光量過多などでハイライトの階調が失われています。露出を調節するとヒストグラムの山が左に移動して、白飛びをなくしたり軽減することができます。
黒つぶれを軽減する
ヒストグラムの山裾が左にはみ出していると黒つぶれがあり、その部分は光量不足などでシャドウの階調が失われています。露出を調節するとヒストグラムの山が右に移動して、黒つぶれをなくしたり軽減することができます。
白飛びや黒つぶれの領域を確認する
画像再生でハイライトの白飛び、シャドウの黒つぶれ部分を警告表示する機能です。ヒストグラムだと画面内のどの部分が白く飛んでいたり、黒くつぶれているのかが分かりませんが、この機能でしっかり確認することができます。
<玄光社の本>