「しずく作品集&撮影テクニック」(浅井美紀・著)より。本書における「しずく写真」はマクロレンズによる接写を基本としており、水滴をレンズのように使うことで、被写体となる花や水滴だけでなく、被写体より奥にあるものを映し込める点が大きな特徴です。花弁に載った水滴に別の花が映り込んだ様子には、人の目を引きつける独特の魅力があります。
写真の表現は、被写体と背景の位置関係、そしてカメラとレンズの違いでいかようにも変化します。本記事では、後半のテクニック解説部分から、「ピントの合わせ方」をご紹介します。
マクロ撮影のピント合わせはとても繊細なので、マニュアルフォーカスで調整します。ピント位置は、しずくの中の映り込みです。マクロ撮影はぼけやすいので、被写体にきちんとピントが合うように絞りを絞る必要があります。
また、ボケは絞り以外に、1.撮影距離 2.背景との距離 3.センサーの大きさ 4.焦点距離が影響します。どこまでピントを合わせて、背景などをどこまでぼかすか考えながら撮影しましょう。
ピント位置とピントの合う範囲に気をつける
○映り込みと輪郭にピント
しずくに映り込みを作った場合、映り込みとしずくの輪郭の両方ピントが合うように、絞りを調節します。
△映り込みだけにピント
しずくの輪郭がぼけていると、作品全体がぼやけた印象になっていまいます。
△輪郭だけにピント
主役はしずくの中の映り込みです。ぼけてしまっては、映り込みの美しさが伝わりません。
ピントの合わせ方とレリーズ方法
マニュアルフォーカスで撮影
構図を決めたら、フォーカスフレームを動かし、拡大表示でピントを確認しながらピントリングで調節します。
拡大フォーカスを使う
ピント位置を拡大して、ピント位置やどこまでピントが合っているかをしっかり確認しましょう。
リモコンでシャッターを切る
シャッターボタンを押した衝撃でぶれてしまうことがあるので、リモコンを使ってシャッターを切ります。
セルフタイマーを使う
セルフタイマー:2秒でシャッターを切ってもぶれは防げます。また、Wi-Fiでスマホにつなげば、スマホでもシャッターが切れます。
F値以外のボケ量に影響する要素(ぼけやすさとぼけにくさ)
カメラとしずくの距離
背景としずくの距離は変えずに、撮影距離を変えて比較しました。同じカメラとレンズを使用しています(Canon EOS 6D+EF100mm F2.8Lマクロ IS USM)。カメラやレンズ、F値、背景の距離が同じなら、被写体に近づくほど(撮影距離が短いほど)、被写体は大きく写り、背景もぼけやすくなります。
しずくと背景の距離
カメラとしずくの撮影距離は変えずに、背景としずくの距離を変えて比較しました。同じカメラとレンズを使用しています(Canon EOS Kiss X5+EF-S60mm F2.8 マクロ USM)。カメラやレンズ、撮影距離、F値が同じなら、背景を離すほどぼけやすくなります。ただし、映り込みは小さくなります。背景をぼかしつつ、しずくいっぱいに映り込ませたい時は、映り込ませる花は大きなものを選びます。
センサーの大きさ
写る範囲(画角)が同じになるように、Canon EOS 6D+EF100mm F2.8Lマクロ IS USM(左100mmの画角)と、Canon EOS Kiss X5+EF-S 60mm F2.8 マクロ USM(右96mm相当の画角)で比較しました。背景との距離、F値は同じです。写る範囲(画角)が同じなら、センサーが大きいフルサイズのほうがぼけやすくなります。
焦点距離の長さ
同じカメラに焦点距離の違うレンズを付け(Canon EOS Kiss X5+EF100mm F2.8Lマクロ IS USM / EF-S60mm F2.8 マクロ USM)、被写体の大きさを同じにして比較しました。焦点距離が長くなるほど写る範囲が狭くなり、圧縮効果(写真の奥行きが圧縮され背景が大きく写る効果)は強くなります。背景が大きく写るということは、ボケも大きくなります。
<玄光社の本>