オールドレンズ・ライフ
第4回

非球面レンズで夜にかける意気込み Ai Noct-Nikkor 58mmF1.2

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、デジタルカメラ全盛の現代において「オールドレンズ」と呼ばれて人気を集めています。人気のきっかけとなったのは、ミラーレスカメラの普及でした。オールドレンズのほとんどは、そのままでは現行機種のカメラに装着できませんが、マウントアダプターと呼ばれるパーツを用いれば、現代のミラーレスカメラに取り付けが可能。そこから「レンズ遊び」が支持を集めるようになったのです。

写真家・ライターの澤村徹氏は、書籍「オールドレンズ・ライフ(玄光社刊)」シリーズで7年に渡ってオールドレンズの楽しみ方を紹介してきました。その集大成として刊行されたのが「オールドレンズ・ベストセレクション」。ここで採り上げた172本の魅力的で個性的なオールドレンズの中から、本記事では、Ai Noct-Nikkor 58mmF1.2をご紹介します。

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オールドレンズ・ベストセレクション

 

Nikon Df + Ai Noct-Nikkor 58mmF1.2 絞り優先AE F1.2 1/4000秒 ISO100 AWB RAW 開放F1.2だけあって、中距離でも大きなボケを稼げる。玉ボケの形が美しい。

Aiノクトニッコール 58ミリF1.2は国産大口径オールドレンズを代表する1本だ。開放F1.2は標準レンズとして特別に明るいわけではないが、ノクトニッコールという名称の通り、夜景撮影に特化した設計コンセプトが他と一線を画している。

本レンズは非球面レンズを採用し、サジタルコマフレアを低減しているのが特徴だ。サジタルコマフレアとは、画像周辺の点像が羽を広げた鳥ような形になる収差である。サジタルコマフレアは絞り込むことで解消するが、ノクトニッコールは開放から収差を抑え、夜景や暗所の高画質な開放撮影を目指したわけだ。単に大口径化するのではなく、活用シーンを明確にしている点が興味深い。

無論、オーソドックスな用途でもすぐれた描写力を発揮する。やさしくも切れ味の良いシャープネスは、ニッコールの十八番と言えるだろう。なお、絞りの刻印はF1.2とF2だが、F1.4にもクリックがある。本レンズはAiレンズなので、ニコンDfのような現行のニコン製デジタル一眼レフにも問題なく装着できる。

 

Ai Noct-Nikkor 58mmF1.2 / Mount : Nikon F mount / Bland : Nikon / 中古価格:300,000~360,000円
ノクトニッコールは1977年に登場した。レンズ構成は6群7枚の変形ガウスタイプだ。徹底したフレアコントロールが本レンズの特徴だ。

 

Nikon Df + Ai Noct-Nikkor 58mmF1.2 絞り優先AE F1.2 1/1000秒 ISO100 AWB RAW 開放近辺では周辺減光をともなうが、F2.8あたりまで絞れば四隅まで明るく撮れる。

 


<玄光社の本>

オールドレンズ・ベストセレクション

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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