高畠聡アニメーション精密背景原図集
第3回

絵の印象を決める「影」の雰囲気 ー映画「メトロポリス」より

アニメーション制作においては、映像背景の元絵となる「背景原図」と呼ばれる作業があります。背景は、作品内で起こるあらゆる事象や世界観をビジュアルとして表現し、作品そのものの雰囲気を決定づける重要な要素です。

TVアニメシリーズやアニメ映画の美術原図や美術設定、CGストラクチャーデザインで知られる高畠聡さんの原図集「高畠聡アニメーション精密背景原図集」では、高畠さんが過去に手がけた映像作品の背景原図と、本人による解説に加え、制作当時のエピソードやインタビューなども併せて収録。緻密で正確な仕事の一端を垣間見ることができます。

本記事では、同氏がCGストラクチャーデザインを担当した映画「メトロポリス」(2001)の背景原画と解説を抜粋して掲載します。

©手塚プロダクション/METROPOLIS製作委員会

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高畠聡アニメーション精密背景原図集

影の雰囲気で映像が決まる

前回説明した色指定を元に、色を移植した街並みに影のレンダリング素材を合成しています。影の素材は本当に大切で、影の素材の雰囲気によって絵が決まると思います。当時は色々試行錯誤して進めました。次の段落に掲載しているのは、「影の方向を決めたい」ということだったので、3パターンの影を作ってどれがいいかプレゼンした時の素材です。

3種類の影

このシ−ンも三種類の影をライティングを変えてレンダリング素材を用意しました。どの雰囲気の影がこのシ−ンに適しているのか考察した後に、本番で使用しております。

実際の映像

実際の劇中の映像ではジグラットが、空からの強い閃光に照らされた後、通常の光に変わっていく中、まわりの街の影や色が変わっていきます。

大統領府
作品中盤に登場する大統領と国防長官との密談のシーンに出てくる大統領府です。この大統領府はデザインが二転三転しました。最初はマチュピチュのイメージのデザインだったのですが、それも違うとなったため、私の方でよりSF的な要素も加えたデザインにしました。大統領府は寄りのシーンも多いため、細部も気にしながらディテールを詰めています。

©手塚プロダクション/METROPOLIS製作委員会


高畠聡アニメーション精密背景原図集

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