飛行機模型製作の教科書
第3回

「飛燕I型丁」で組み立て方と塗装の仕方を覚えよう(前編)

ミリタリープラモデル、とりわけ航空機模型の中でも、機体の緻密な再現性や組みやすさで定評のあるタミヤ「1/48傑作機」シリーズは、モデルとなった機体への綿密な取材によって再現されたディテールやギミックが特徴です。

ホビージャパンの「飛行機模型製作の教科書 タミヤ1/48傑作機シリーズの世界 レシプロ機編」では、本シリーズに属する機体の組み方や塗装の手順を詳細に解説。豊富な作例もさることながら、組み立てや塗装に必要な道具や接着剤、塗料などの解説も網羅しており、初めて航空機模型に挑戦する人にも優しい構成となっています。

本記事では、林哲平氏による「川崎 三式戦闘機 飛燕I型丁」の「HOW TO BUILD」より、パイロットとコックピット、機体の組み方と、内部塗装に関する部分を紹介します。

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飛燕Ⅰ型丁を缶スプレー塗装メインで完成させよう!

タミヤの1/48 傑作機シリーズにラインナップされている日本機の中でも最新アイテムである「飛燕I型丁」。本キットはとにかくパーツが吸い付いていくように組みあがり、組み立てのストレスがほとんどありません。塗装も第244戦隊小林隊長機をセレクトすれば、カラーリングもシンプル。ここでは缶スプレーを使用してこのカラーリングを再現し、飛行機模型を完成させて見ましょう!

POINT.01:パイロットとコクピット

パイロットフィギュアは最新の3Dスキャンと原型師の高い技術により素晴らしい完成度。ぜひコクピットに搭乗させたい。

POINT.02:機体の組み立てと内部塗装

内部塗装は、近年の考証を取り入れたカラーリングで塗装してみる。

POINT.03:機体の塗装

今回のキモである缶スプレー塗装のポイントをレクチャー。缶スプレー仕上げでも美しいシルバーの飛燕を作り上げることができる。

POINT.04:デカールと仕上げ

飛燕のラインはデカールで。ここでデカールの基本を覚えれば、他の飛行機製作もへっちゃら! しっかりとコツを覚えて欲しい。

パイロットとコクピット

フィギュアのパーティングラインをデザインナイフのカンナがけの要領で消す。タミヤのキットはキャノピーの透明度が高いので、残っていると完成後もかなり目立つ。

頭部は胴体と接着せず単品で塗ったほうが作業しやすい。持ち手を差し込むための穴をピンバイスで開ける。爪楊枝を突き刺せば持ち手の完成だ。

シタデルカラーのセラマイト・ホワイトを筆塗り。乾燥が早いので、少し塗っては乾燥を繰り返せば簡単に発色する。

レイクランド・フレッシュシェイドで全体をウォッシング。さっと一筆塗るくらいで十分。つけすぎた塗料は筆先に染み込ませて取り除こう。

肌を塗装した状態。セラマイト・ホワイト→レイクランド・フレッシュシェイドのコンボはどんな人でも高クオリティの顔に仕上がるフィギアの必殺技。

肌を塗装したら頭巾とマスクをタミヤアクリルのカーキとフラットブラックで塗り分ける。シタデルカラーは高価なので、基本はタミヤアクリル、ワンポイントをシタデルと使い分けるとコストを減らせる。

胴体の塗装。最初に一番面積の大きい部分から塗るのがポイント。フラットブラウンをはみ出しを気にせずさっと塗ってしまおう。

エリをシタデルのセラマイト・ホワイト、手袋をタミヤアクリルのカーキ、ベルトを濃緑色で塗り分ける。筆はシタデルブラシのベース塗装用で、一番細いものを使うと塗りやすい。

基本塗装が終わったら全体をレイクランド・フレッシュシェイドでウォッシング。細かいディテールに陰影がつき、立体感が強調される。

ドライブラシで凹凸をさらに強調してみよう。タミヤエナメルカラーのバフを皿に出し、平筆の先に少量の塗料をつける。

ティッシュである程度の塗料を拭き取る。ちょっとティッシュに色がつくかな? ぐらいがいい塩梅だ。

軽くなでるように筆先に残った塗料を凸部に乗せていく。やりすぎると不自然になるので気をつけること。やりすぎたときはエナメル溶剤で拭き取ってリトライしよう。

ドライブラシ後、プレミアムトップコートつや消しでツヤを整え、ゴーグルにグロスブラックを塗れば完成だ。

精密な出来映えのコクピット。すべての部品を接着すると塗装やデカール貼りが大変なので、この3ブロックに分けておこう。

仮組みしてコクピットの合いを確認。タミヤのキットは精度が高いのですり合わせの必要はあまり無いが、エアモデルの基本なので今のうちから慣れておこう。

フィギュアを載せて改めてバランスを確認。パーツを接着する角度がズレていたりするとフィギュアがうまく収まらないことがある。胴体を接着したあとはバラせないエアモデルは仮組みとすり合わせを徹底するクセをつけておこう。

機体の組み立てと内部塗装

胴体や主翼など、大きなパーツは切り出しするときに表面にキズがつきにくいアンダーゲート形式で成型されている。写真の赤く着色した部分がアンダーゲートだ。

アンダーゲートの切り離しは簡単だ。まずはニッパーの背をパーツの面に平行にピタリとあててパチン! と切り離そう。

ニッパーだけだとわずかにゲートが残るので、デザインナイフで残った部分を丁寧に削り落としておこう。

ゲートをカットした状態。アンダーゲートは接着面にゲートがつくぶん、少しでもでっぱりが残っていると隙間が空くので注意しておくこと。

キットにはエンジンが付属しているが、エアモデル初心者がいきなりエンジンまで塗り分けて作るのはハードルが高く、完成が遠のくのでオミットする。

説明書に指示は無いが、キットにはエンジンレス用のプロペラ軸パーツが入っているのでこれを使おう。

このように組み込めばOKだ。初心者はとにかく完成までのハードルを下げるのが一番!!! 完成後見えない部分は全部省くので問題なし。プロにもそういう人はいっぱいいる。

コクピット内部のパーツは最後にさっと塗り分ければいいので、この時点で接着してしまおう。一応作例なのでパーツをつけているが、完成後は見えないので面倒ならつけなくてもOKだ。

飛燕の機体内部色は伝統的にダークイエローとされてきたが、最新の研究だと明灰白色という説も。最新の研究結果だから正しい、ではなく、「この色が一番かっこいい!!!」と自分が思う色を選ぼう。どちらも正解だ。

作例は明灰白色で塗装することに。缶スプレーを塗装するときは事前にしっかりとよく振り、内部の塗料を撹拌しておこう。

機体内部に塗料を吹き付ける。完成後はほぼ見えなくなる部分なので、さっと一吹きでOK。ムラやダマは気にしなくていい。本番である銀塗装の練習だと思うこと。

塗装した状態。タミヤエアーモデルスプレーは乾燥時間は早いが、次の作業までは念のため夏なら15分、冬なら30分くらいは乾燥時間をとっておこう。

細かいパーツはマスキングテープを両面テープで割り箸に貼り付け、このように塗装しよう。繊細なパーツを両面テープに直接貼ると外すとき粘着力が強すぎて折れたりするのでマスキングテープでワンクッション置くこと。

機体内部のディテールを際立たせるためにMr.ウェザリングカラーのマルチブラックでウォッシング。瓶のままだと濃すぎるので、専用溶剤で薄めて使うこと。

薄く溶いたマルチブラックを平筆で伸ばしていく。凹凸をくっきりさせるため、ディテールの隅々にまで行き渡らせよう。

塗ったら乾燥したティッシュでさっと拭き取る。拭き取りしなくてもいいと思えばそのままでも問題ない。

コクピット細部を塗り分ける。キットの彩色指定ではフラットブラックとセミグロスブラックを分ける指示があるが、初心者のうちは全部フラットブラックで塗って問題ない。

胴体内部の塗り分け。ブルーやシルバーが入ると一気にリアリティが高まる。が、ここも見えない部分なので面倒なら塗らなくても大丈夫だ。

彩色したコクピットにフィギアを乗せた状態。精密なコクピットは丁寧に塗り分けるとそれだけで一個のプラモデルとして成立する出来映え。ただ、やはり完成後は見えないので初心者は無理しないように。

胴体を合わせて全体を確認。胴体を接着して貼り合わせるともう後戻りはできない。入れ忘れや塗り忘れのパーツが無いか最終チェックをしてから接着すること。

パーツの接着にはタミヤ流し込み接着剤の速乾タイプを使う。乾燥が非常に早く、通常の流し込み接着剤だと溶剤でゆがみやすい飛行機の翼などにも問題なく使える。

速乾タイプの接着剤はすぐに固まる。急ぎたい人は1時間ほど、確実に行くなら3時間くらい待ってからタミヤフィニッシングペー600番で合わせ目からはみ出た接着剤を削って平らにならす。

胴体の合わせ目も同様に処理する。飛燕は銀塗装なので、600番やすりっぱなしだとキズが目立つ。1000→1200→1500番の順番に磨いてなめらかにしておこう。

接着面がそのままパネルラインとなっているパーツは要注意。接着剤の量が多すぎるとはみ出して汚くなってしまう。少量をスっと流し込んで固定するのがコツだ。

後編へ続く


飛行機模型製作の教科書 タミヤ1/48 傑作機シリーズの世界「レシプロ機編」

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