醤油本 改訂版
第7回

醤油造りは木桶が要。自ら技を継承する四国の蔵元

醤油という調味料は、私たち日本人の食卓に欠かせない存在でありながらも、あるのが当たり前だが実はあまり詳しく知らない、という方もいるのではないでしょうか。

醤油本 改訂版」は、醤油の歴史から製造過程の詳細、好まれる味の地域性や蔵元への取材などを通して、醤油への理解を深めることのできる一冊です。醤油に関する広範なデータをコンパクトにまとめており、読めば自分好みの醤油を探す一助になることでしょう。2015年に発行した同名の書籍から内容を更新し、蔵元データのアップデートを行いました。

全国には多くの蔵元が存在しますが、本記事では第2章「醤油を見つける」より、四国の蔵元を抜粋して紹介します。

*販売価格は、2023年12月時点の金額で、変更になる可能性があります

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醤油本 改訂版

四国の蔵元

木桶桶も造る人気の蔵元:ヤマロク醤油

https://yama-roku.net/(見学可・予約不要)

年中無休で朝から晩まで仕事をする、休むことを知らない5代目の山本康夫社長。

入りくんだ細道の先にヤマロク醤油がある。平日も正月も国内外から訪ねる人が絶えず、5代目山本康夫さんも突然の訪問であろうと当たり前のように案内する。話す内容はもっぱら「桶」を軸にした食の話で、興味がある人とは熱弁が繰り広げられる。

年中無休で現場を見せるのも、山本さんには「孫やひ孫の代に本物の醤油を残す」という元来貫く信念があるから。2011年には木桶が要と悟り、「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、2020年に大桶造りを辞めると宣言していた最後の桶屋に修行に行って自らを桶造りの技を培った。さらに2012年には、小さなパイを奪い合うのではなく手を取り合って木桶仕込み醤油を増やそうと、木桶で醤油を作る蔵元や木桶関係者に声をかけて木桶を造る技をシェアし、新たな桶職人の育成も開始。2022年には、木桶仕込み醤油と木桶の需要と価値を一層高めるべく、全国各地の木桶仕込みを行う蔵元に声をかけて「木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアム」を発足。未来に本物の醤油を残すために勇往邁進し続けている。

木桶で醤油を造る蔵人や、木桶に関わる食品メーカーや流通業者、大工や料理人などに木桶の技を伝承している。
竹材の準備を担当し続ける山本さん。初めて竹を削った時は1本あたり1時間かかったけれど、今では3分台が山本さんの基準。
年中多くの見学者が訪れる
「木桶による発酵文化サミット」をヤマロク醤油で行うと、3日間で600人集まった。

濃厚な旨味を楽しむ「鶴醤」
木桶や柱や土壁に住み着いた菌が4年間じっくり醸し、大豆と小麦本来の甘味と旨味を存分に引き出した非常に濃厚な醤油。醤油や発酵通の人なら誰でも知る人気の醤油だ。

145mlビン ¥810(税込)、500mlビン ¥1,944(税込)/原材料:大豆、小麦、食塩

 

木桶を300本以上 使う大手醤油屋:マルキン醤油(盛田)

http://moritakk.com/(屋外より見学可・予約不要)

大手だが非効率な木桶でも造る。

日本の5大醤油メーカーの1つ。小豆島を千葉に匹敵する産地にするために、地元の醤油業者たちが討議し、リーダー役の蔵「丸金」を設立。人も設備も営業力も集約させ、小豆島の醤油の技術と販路を開拓し、小豆島の蔵元を牽引してきた。大量生産型の醤油を造りつつ、天然醸造用の木桶を306本、他目的も含めば450本余という世界最多の木桶を使い続ける、唯一の蔵。

醤油の歴史や造り方を紹介している「マルキン醤油記念館」。
醤油を自社船で運ぶ。220t~230tを一気に運べる。

醤の郷 小豆島 丸大豆生しょうゆ
創業時から高めてきた、徹底した衛生・品質管理により、木桶仕込かつ生でも衛生的でブレがない。

200ml ビン¥551(税込)/原材料:大豆(国産)、小麦、食塩/アルコール

 

培われた技術で多様な要望に応える:タケサン

https://takesan.co.jp/(見学可・要予約)

タケサングループとして、木桶を約220本持つ。

戦後の食糧難の時に、さつまいもの茎を醤油で炊いて佃煮を作ることから礎を築く、創意工夫に長けた蔵。時代に合わせて醤油を使った多様な商品を開発し続けており、PB・OEM商品も含めると、年間で数百種類もの商品を製造する。産む商品は海外でも好評で、さらなる要望に応えるべく、2022年にはアメリカ輸出用に新桶導入し、グルテンフリーの醤油を造った。

ユーモアある武部興征社長。
2022年1月にタケサンのスタッフも参加しながら新桶を造った。

生搾醤油
タケサンの看板商品。アメリカの「Amazon」の醤油ランキングでも日本産の醤油中で1位を得る。

360mlビン ¥710(税込)/原材料:大豆(輸入)、小麦、食塩

 

日本のオーガニック醤油の先駆け:ヤマヒサ

https://yama-hisa.co.jp/(見学可・要予約)

木桶本数は約170本、全国の醤油蔵では3番目の所有本数。

「原材料が一番大切です。どんなに努力しても材料を超えることはできないですから」と、当然と言わんばかりに話すヤマヒサは、日本で初めてオーガニックの醤油を輸出した醤油蔵の一つ。今では世界各国の自然食品のお店に並ぶ。代々揺るがない信念は「自分たちが食べたいものを造る」こと。等級が高く生産者の顔がわかる原材料を使い、全量自社で造って販売する。

NK缶は2機用意。
出処のわかる質の高い材料を使って自社で麹を造る。

有機しょうゆ
まるで原材料そのものの力がみなぎっているかのような香り高く、力強い味。

500mlビン ¥1,296(税込)/原材料:有機大豆、有機小麦、食塩

 

使いやすいと料理好きの人から評判:正金醤油

https://shokinshoyu.jp/(見学可・要予約)

小豆島町で一番歴史のある諸味蔵。いつもきれいで澄んだ香りが漂う。

全て国産の丸大豆と小麦を使い、約120本の木桶で仕込む。繊細な食材やだしの風味を活かす理想な醤油だと、料理好きの主婦や料亭から高い支持を得る。「醤油業界では旨味成分の高さを重要視するので、若い頃は旨味の高い醤油を造ろうと思っていたけど、僕が日々料理をする上で、醤油の味が前に出ることなくそっと下から支える醤油がいいと思うようになったんです」と話す。さらに気軽に使って欲しいと値段もお手軽。

醤油造りのことを偏りなく正直に伝えてくれる4代目藤井泰人社長。

天然醸造こいくち醤油

1Lビン ¥928(税込)/原材料:大豆、小麦、食塩


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