グッとくる横丁さんぽ
第3回

杜の都は横丁天国─ 宮城・仙台「文化横丁」

『グッとくる横丁さんぽ 全国50の裏通りを味わうイラストガイド』は、旅と食の記事を長年手がけてきた編集者である村上 健さんが、スケッチブックを携えて巡った全国の裏通りを、ほのぼのとしたイラストと軽妙な文章で紹介するイラストエッセイです。

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グッとくる横丁さんぽ 全国50の裏通りを味わうイラストガイド

第3回は、「杜の都」仙台の多彩な横丁をめぐります。

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文化横丁西側の入口。南側にもう1本通りがある。

「緑被率」という言葉をご存じですか? 自然の緑地や水辺、農地、公園などが地域に占める割合を示す指標です。その緑被率が約79%と、全国の大都市でトップクラスにあるのが仙台市。終戦ひと月前の仙台空襲で焼き尽くされた中心部は、戦災復興区画整理事業で整然としたまちなみが生まれ、仙台城跡のある青葉山公園をはじめ、定禅寺通や青葉通の美しい並木も印象的です。

そんなまちに、猥雑で懐かしい風情の横丁などなかろうと考えるのは早計。「稲荷小路」「虎屋横丁」「名掛丁センター街」など、戦前・戦後から続く大小の横丁が中心街に数多く生き残っています。

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東北の大都会・仙台の中心街を歩けば、横丁や路地裏で風情ある店に出合える。

仙台駅からのびる大通り「青葉通り」西側の「文化横丁」もその一つです。2本の路地をつないで新旧の飲食店が軒をつらね、灯ともしごろには、勤め帰りのオジサンたちで連日大賑わい。地元で働くサラリーマンが教えてくれたオススメは、昭和28(1953)年創業の餃子「八仙」、安くてうまい「やきとりきむら」、古き良き時代の居酒屋そのままの店「源氏」など。通り1本隔てた南側には「壱い ろは弐参横丁」もあって、こちらは飲食店に青果や精肉、雑貨の店が入り交じり、横丁の中ほどに共同便所が設けられるなど、大型スーパー誕生以前の昭和30年代そのままの空気が漂います。

100万都市「杜の都」は、独眼流政宗以来の緑だけでなく、横丁の多彩さも全国トップクラスなのであります。

 

昭和が香る仙台巡り

400年前、伊達政宗が飢餓に備えて果樹による屋敷林づくりを奨励。以来、杜の都となった100万都市
仙台。政宗が自ら包丁をふるう美食家だったせいか、東北中のうまいものが集まる食のまちでもあります。

サラリーマンの単身赴任先として人気なのは、比較的安くてうまい店が多いのも理由の一つ。オジサン好
みの店を探すなら、一大歓楽街の国分町をはじめとする中心街の横丁がいい。短い赴任だと行き尽くせない
ほどの店があります。

腕に覚えのある料理男子なら、仙台駅すぐの「仙台朝市」で豊富な地元食材を仕入れる手も。

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物資が欠乏した戦後、進駐軍が食べないタンを使ってはじまったのが仙台名物の牛タン。地元の人に勧められたのは国分町の「一隆本店」。
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定禅寺通の近く、稲荷小路の「おでん三吉(さんきち)」は庶民的な雰囲気。昭和24(1949)年創業。
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明治10(1877)年創業、五ツ橋通りにある「村上屋餅店」の三色餅。
「ごま」「づんだ」「くるみ」の3 つの味が絶妙。

 

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近代的な仙台駅近くで懐かしい風情を残す「仙台朝市」。戦後まもなく露天商が朝だけ並んだ100mの通りには、70軒ほどが終日営業。
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仙台市民の台所「仙台朝市」に並ぶ青果と鮮魚。

 

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仙台駅に近いため、開設から今にいたるまで国鉄仙山線で運ばれる山形産の青果が多い。

 

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JR「仙台」駅から徒歩10分

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グッとくる横丁さんぽ
全国50の裏通りを味わうイラストガイド

著者プロフィール

村上 健

昭和26(1951)年大分市生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、株式会社草思社入社。企業の広告制作と書籍編集に携わる。平成10(1998)年に独立。本業の傍ら、全国各地のローカル線やまちなみなどをスケッチし続けている。
著書:『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』(JTBパブリッシング)
共著:『怪しい駅懐かしい駅』(草思社)

 

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