心に響く蔵元──醤油を巡る旅
第7回

四国の蔵元を訪ねる

『醤油本  醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本』では、先人や周りの人に敬意を払い、熱心に勉強し、日々の経験の積み重ねから多くの人に愛される醤油を造る全国の蔵人達を紹介しています。

本連載の第7回では、四国で地元に密着した魅力的な蔵元8軒をご紹介します。

 

■ヤマロク醤油
木桶も作る人気の蔵元

年中無休で朝から晩まで仕事をする、休むことを知らない5 代目の山本康夫社長。

入りくんだ細道の先にヤマロク醤油がある。平日も正月も訪ねる人が絶えず、ヤマロク醤油5代目山本康夫さんも突然の訪問であろうと当たり前のように案内する。話す内容はもっぱら桶」を軸にした食の話。興味がある人とは何10分と熱弁が繰り広げられる。

山本さんには元来貫く信念がある。「孫やひ孫の代に本物の醤油を残す」。だからこそ年中無休で現場を見せ、最近では残り1社となった桶屋に修業に行って自ら桶を作り始めた。その山本さんの意思に共感する人は多く、年々買い求める人が増えている。伝えねばとやってくる雑誌やテレビは1年に50媒体以上。2回目の桶作りには、日本各地で桶で仕込む醤油や酢の蔵元が泊まり込みで力を貸しに訪れた。こうして波紋のように広がる共感がまた人を呼ぶ。

描いていた夢へと一歩一歩進むにつれ、夢を追えているのも先代が伝統を受け継いでくれたからだという思いが深まっていると言う。だからこそせめて孫の代まで残すことが課せられた宿題。そう何度も心に刻み、山本さんは力強く百年先の未来を見つめる。

2013 年に初めて自分たちだけで新桶を作る時には、多くの人が応援に駆けつけた。
2009 年秋、届いた新桶に神事を行う。
木桶62本分の諸味を、社長自らたった1 人で責任持って管理している。

【製品紹介】
濃厚な旨味を楽しむ
鶴醤
大豆と小麦本来の甘味と旨味を存分に楽しむことができる濃厚な醤油。菌の調整や添加物の使用も一切なし。桶や土壁に住む菌が4 年間じっくり醸して造り上げた。

145㎖ビン ¥486(税込)
500㎖ビン ¥1,080(税込)
原材料 : 大豆、小麦、食塩

ヤマロク醤油
香川県小豆郡小豆島町安田甲1607
TEL 0879-82-0666 / FAX 0879-82-1293
http://yama-roku.net/
見学可(予約不要)


■マルキン醤油
木桶を300本以上持つ大手醤油屋

日本の5大醤油メーカーの1つ。小豆島を千葉に匹敵する産地にするために、地元の醤油業者が話し合ってリーダー役の蔵元「丸金」を設立した。人も設備も営業力も集約させ、小豆島の醤油の技術と販路を先陣切って開拓し、小豆島の蔵元を引っ張ってきた。設備を入れて品質の安定した醤油を造る一方、伝統的な木桶を300本以上持つ。

「マルキン醤油記念館」で醤油の歴史や造り方を紹介している。
木桶の他タンクでも造る。
できた醤油は自社船で運ぶ。220 t ~230tを一気に運べる。

【製品紹介】
天然醸造 初しぼり生
木桶で仕込み、自然垂れの一番搾りだけを使った生の醤油。

200㎖ ビン¥389(税込)
原材料: 脱脂加工大豆(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩、大豆(遺伝子組換えでない)、アルコール

マルキン醤油 小豆島工場
香川県小豆郡小豆島町苗羽甲1850
お客様相談窓口 0120-691-602
http://moritakk.com/
見学可(屋外より)


■ヤマヒサ
日本のオーガニック醤油の先駆け

木桶本数は約170 本、全国の醤油蔵では3番目の所有本数。

「原材料が一番大切です。どんなに努力しても材料を超えることはできないですから」と、当然と言わんばかりに話すヤマヒサは、日本で初めてオーガニックの醤油を輸出した醤油蔵の一つ。今では世界各国の自然食品のお店に並ぶ。代々揺るがない信念は「自分たちが食べたいものを造る」こと。等級が高く生産者の顔がわかる原材料を使い、全量自社で造って販売。全工程を責任持って行う。

出処のわかる質の高い材料を使って自社で麹を造る。
NK缶は2機用意。

【製品紹介】
有機しょうゆ
まるで原材料そのものの力がみなぎっているかのような香り高く、力強い味。

500㎖ビン ¥1,080(税込)
原材料 :有機大豆、有機小麦、食塩

ヤマヒサ
香川県小豆島小豆島町安田甲243
TEL 0879-82-0442 / FAX 0879-82-5177
http://yama-hisa.co.jp/
見学可(要予約)


■正金醤油
使いやすいと料亭から評判

全て国産の丸大豆と小麦を使って約120 本の木桶で仕込む。繊細な食材やだしの風味も活かす理想な醤油だと料亭からも支持される。「若い頃は旨味の強い醤油を造るのがいいと思っていたけれど、本当にいい醤油を考えていくうちに、醤油の味が前に出ることなくそっと下から支える醤油がいいと思うようになったんです」という言葉にも納得。さらに気軽に使って欲しいとお手軽価格で販売する。

小豆島町で一番歴史のある諸味蔵。いつもきれいで澄んだ香りが漂う。
醤油造りのことを偏りなく正直に伝えてくれる藤井社長。

【製品紹介】
天然醸造こいくち醤油
幅広い料理に合い、主に都市の人々から支持される正金醤油で一番の人気醤油。価格も手頃だ。

1ℓビン ¥702(税込)
原材料 : 大豆、小麦、食塩

正金醤油
香川県小豆郡小豆島町馬木甲230
TEL 0879-82-0625 / FAX 0879-82-5388
http://shokinshoyu.jp/
見学可(要予約)


■広瀬醤油
香川県民愛用の甘口醤油

「菌にいい環境を」と壁や木桶も丁寧に清掃されて いる。

香川の人々が好む甘い醤油を造り、主に一升瓶に詰めてトラックで各家庭に配達。近年はうどん屋での取り扱いが増え、人気を陰で支えている。その醤油は県内では珍しく麹から自社で仕込み、全て30 本の木桶で約1 年発酵・熟成。設備や建物は丁寧に清掃・整備されており、心地のいい香りが流れている。

醤油はトラックで配達して手渡しする。
創業明治29 年の、レトロモダンな外観。

【製品紹介】
百年の味
100 年前と同様の製法を受け継ぎ、丸大豆を使って木桶に仕込み、地元好みの甘さに仕上げた醤油。

500㎖ペットボトル ¥268(税込)
原材料 : アミノ酸液、大豆、小麦、食塩、アルコール、調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア)

広瀬醤油
香川県高松市一宮町1819-3
TEL 087-885-1767/ FAX 087-885-1757
http://hirose-soy.com/
見学可(要予約)


■福寿醤油
地元徳島に根付き共に成長する

全て四季の温度変化の中で諸味を育む。

地元なら一本からでも配達してくれる、地元で愛される蔵元。醤油造りに精通する職人気質な父親が造る醤油を、広報や人を繋ぐのが得意な息子が二人三脚で歩み届ける。最近は中学の先輩後輩が跡を継いでいる鳴門の酒蔵や大谷焼やレンコン農家などと連携して地域一帯の良さを伝える活動も積極的に行っている。

歴史を重ねたことを物語る200 年近い立派な蔵。
人当たりが良く、気さくな松浦亘修専務。

【製品紹介】
天然醸造しょうゆ二年仕込み
国産大豆と小麦を木桶で仕込んだ無添加・無着色の醤油。昔ながらの造りでスッキリとした味わい。

1800㎖ビン ¥1,030(税込)
原材料 : 大豆、小麦、食塩

福寿醤油
徳島県鳴門市大麻町池谷大石8
TEL 088-689-1008 / FAX 088-689-1009
http://www.fukujyu1826.com/
見学可(要予約)


■忽那醸造
嗜好に合わせた2本柱の醤油を極める

木桶とタンクの両輪で醤油を造る。

愛媛で愛される甘口の醤油と、有機・無農薬栽培の大豆と小麦を桶で仕込んだ無調整の醤油。この2 本柱を立て、「美味しさの秘訣は、諸味を寝かせること」と1 年以上諸味を寝かして造り上げる。コープや地元スーパーからも「いいものは値下げしなくていい」と認めてもらい、自信を持って販売している。

創業は大正10 年。地元を商圏に美味しいものを追求する。
地元の嗜好に合わせた甘口の調味料を多種揃える。

【製品紹介】
杉樽仕込醤油
国内産の有機大豆と有機小麦を使い創業当時からの杉樽仕込み。添加物を使用せず長期熟成。

300㎖ビン ¥648(税込)
原材料 : 大豆、小麦、食塩

忽那醸造
愛媛県松山市北条822
TEL 089-993-0927 / FAX 089-993-0928
http://www.kutsuna.co.jp/


■辻三親商会(商標「フジマルツ醤油」)
昔ながらの醤油を地元の人に手渡し

一貫生産することは譲れないと話す辻 清志社長。

造る醤油の8 割を蔵人自ら配達するほど地元に根付いた蔵元。甘い醤油が根付く四国の中でも、特に甘い醤油を好む愛媛南部や高知西部の人に合わせた濃厚な甘さの醤油は、地元の人にとって代用の利かない必需品。最近は地元特産の柑橘「愛南ゴールド」を使った商品開発も積極的に行うなど、地域活性にも一役を買う。

今なお帆布の袋に諸味を入れて舟で搾る。
社員みんなの笑顔がいい。

【製品紹介】
杉樽仕込みもろみ使用のさしみ醤油

360㎖ペットボトル ¥410(税込)
原材料 : アミノ酸液、小麦、脱脂加工大豆、食塩、糖類(砂糖、水あめ、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖)、甘味料(ステビア、甘草)、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、増粘安定剤(キサンタンガム、グアーガム)、V.B1

辻三親商会
愛媛県南宇和郡愛南町御荘平城5360
TEL&FAX 0895-72-0032
http://fujimarutsu-shoyu.com/
見学可(要予約)

 


醤油本 醤油を見つけて 醤油を知り 醤油を楽しむ本

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<著者プロフィール>

高橋万太郎
日本全国選りすぐりの醤油を100㎖で統一して販売する「職人醤油」代表。
各地の醤油蔵の訪問件数は300を超え、今も定期的に歩き回っている。伝統産業・地域産業の中で「つくり手」と「使い手」の「つなぎ手」となる組織を目指して日々挑み続ける。1980年群馬県前橋市出身。

黒島慶子
醤油とオリーブオイルのソムリエでwebとグラフィックのデザイナー。
小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20 歳の時に体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけている。


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