「光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は、タイトルの通り、人物撮影時におけるラインティングテクニックを指南する主旨の書籍です。本書ではストロボライティングの基本と、後幕シンクロやマルチ発光などの応用技術をカバーしていますが、このほかにもストロボの基本を学ぶ前段階として、自然光を活用した撮り方も解説しているのが特徴となっています。
本記事では、チャプター2「実践!イルコのポートレート・テクニック」より、日中シンクロ撮影と多灯ライティングのテクニックについての記述を紹介します。
日中シンクロで被写体を起こす
ストロボを使った日中シンクロでもっとも代表的な方法は、左のように青空をバックにした撮影です。こういうシーンでは、背景の露出を先に決めて、被写体がアンダー状態になってるかを確認し、被写体がちょうどいい明るさになるようにストロボで起こします。ですから、こういう明暗差の大きい条件の撮影では、ある程度パワーのあるストロボじゃないと光量が足りません。
日中のストロボを使った撮影方法には、3種類の方法があります。カメラのシンクロスピードとは、ストロボの光がセンサー全体に当たる状態のときの一番速いシャッター速度のことです。多くのカメラでは、シンクロスピードは1/200秒前後が多く、シンクロスピードよりも速いシャッター速度に設定してしまうと、写真に影が入ってしまいます。その場合の3つの対処方法を、下にまとめました!
シンクロスピード(1/200秒、1/250秒など機種によって違います)に間に合わないときは、次の方法のどれかを選びます。
1. NDフィルターを使ってシャッター速度を遅くする
NDフィルターを使うと色に影響させずに光量を下げることができるので、ND8かND16フィルターを使ったりします。
2. 絞りを絞る
シャッター速度はシンクロスピードにして、露出が明るい状態を絞りで調整する方法です。ただし、この撮り方は広角、超広角レンズのときにしか使いません。135mmレンズで撮影して、絞りをF11くらいまで絞るポートレートの撮り方はあまり好きじゃない!望遠は背景をぼかしたほうが立体的に写ります。
3. ハイスピードシンクロで撮影
上の写真もそうですが、この方法が一番多いです。ある程度ストロボに負担が多くなるけど、速いシャッター速度でも撮影できます。ただし、ハイスピードシンクロを行うためには、対応するラジオスレーブとストロボが必要です。私はニッシンMG8000ストロボと、ラジオスレーブはCactusのV6iiを使うことが多いです。
上の写真は、階段の上の方からストロボを1灯当てています。どんな場所にストロボを置けるか、現場をよく観察するのも大事!
立体的に撮れる多灯ライティング
撮影では1灯ライティングが多いですが、複雑な光を作りたいときは、いくつかの場所にオフストロボを置いて多灯ライティングをします。特別なストロボではなく、私はぜんぶクリップオンストロボか、その場にある光を使っています。要は光ればストロボは何でもいいんです!あとはどんな風に、その光の量と方向性、そして質を変えて使うかです。
私がよく使う多灯ライティングは、以下の3つです!
夜景ポートレート
夜景ポートレートでは、ショーウインドウや自動販売機など、その場にある光をもう1灯に見立ててライティングすることがよくあります。この写真は灯台の光で多灯!
雨撮影のライティング
雨撮影では、バックライト1灯と被写体を照らす前方からのライティングで2灯にすることが多いです。
トンネルライティング
トンネルのライティングは、被写体の後ろにカラーフィルターを付けたバックライトを置いて、トンネルの壁に向けて上に照らします。同時に被写体にも光が入ります。
いちばんよく使うのはクロスライティング
多灯ライティングでもっともよく使うのは、ストロボとストロボで被写体を挟んだクロスライティングです!ストロボは被写体の延長線上に置きます。光で被写体をサンドイッチすると、前からの光で顔がしっかり見えて、後ろからの光で輪郭に光が入るので、被写体に立体感が生まれます。
多灯ライティングに挑戦するなら、まずは1灯のオフストロボを用意して、もう1灯はその場にある明かりを使ってサンドイッチしてみるといいと思います!
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