撮影時のコンディションとして最も基本的で重要な要素は「光」です。撮影者は光が足りなければ照明を用意し、明るすぎればフィルターなどで露出を調整します。光の当て方一つとってもノウハウがあり、撮影者にとって光の使い方、付き合い方は永遠のテーマといえるでしょう。
「自然光だけで美しい ポートレートのつくり方」では、私たちの最も身近にある自然光だけを使ったポートレート撮影をテーマとして、基本的な考え方やノウハウを作例とともに解説しています。
本記事ではChapter1「写真は光と影」より、ロケ地のライティング条件となる天候によって撮れるポートレートの特徴について説明します。
天候別に撮れるポートレートの特徴
天候によって写真の写りが変わってくる。撮りたい写真にあわせて日を選ぶか 、気候にあわせて写真を変えることになる。
晴れの場合
青空
天候別に、どのような写真が撮れるかを見てみよう。まず、晴れの場合。晴れの一番の特徴は、青空が撮れることだ。「青空」の写真は、まさに夏の青空を背景にモデルを撮っている。
ただし、注意が必要なのは、青空を撮りやすい時間帯と撮りにくい時間帯があることだ。この写真は真夏の7月の撮影だが、夏の真昼では撮りにくい。太陽が真上にあり、光が強すぎるからだ。光が強いと、空が白くなりやすく、青くなりづらい。青空を撮るのであれば、太陽に角度がついた、順光の状態がよい。
「青空」の写真は夕方の撮影だ。夕方だと日が赤くなってしまうが、太陽と真逆の方向を背景にすることで、青い空が撮れている。
一方、「夕日」の写真は、冬の夕日を逆光で撮ることで、空が白くなっている。
夕日
また、晴れの場合の特徴としては、光が強いため影ができやすい点がある。顔や体の凹凸、角度によって、明るいところと暗いところのコントラストが強くなる。そのため、くっきりとした写真が撮りやすいというのが特徴だ。彩度が高めの印象もあり、晴れの日の写真は、全般的にすっきりはっきりした印象の写真になりやすい。また、木漏れ日など、影を活かした写真は、晴れているときにこそできる。
もう一つ、晴れの撮影での注意点に、色かぶりがある。光が強すぎると、周囲にあるものや衣服に光が反射して、その色が人物に影響してしまう。たとえば、赤い服を着ているときにほんのり首のあたりの肌が赤くなったり、緑や赤など原色に近い建物に光が当たっていたるとモデルにうっすらその色がついてしまうことがある。
曇りや雨の場合
曇りは光が柔らかい
次に曇りや雨の場合を見てみる。曇りの光のイメージは、たとえていうと、窓にレースのカーテンをかけた状態だ。直射日光というより、1枚かぶせものをした感じで、光が柔らかくなる。また、光が拡散された状態になる。
これによって、明るいところと暗いところがあいまいになり、全体的に明るさが均一に近づく。太陽側に向くと明るいというのは多少はあるが、光が拡散され、暗いところと明るいところの差が少なくなるので、どの向きでも同じような印象になる。
一方で、光によるバリエーションは出しにくくなる。木漏れ日や影などの演出もしにくい。背景や構図でバリエーションを出す必要がある。
また、曇りや雨では、当然ながら、写真がちょっと暗くなりやすい。そのため、カメラ側で意識的に明るめに仕上げることがある。薄曇りなら明るくなりすぎず好ましいのだが、どん曇りだと暗い写真になってしまうので、対応が必要だ。ただし、光の質としては、薄曇りでもどん曇りでも、あるいは雨でも、あまり変わらない。
色味でいうと、曇りは少し青くなる。オートホワイトバランスではカメラが色を調整してくれるが、撮影や現像のときに自分で決める場合は、色温度を暖色に調整する必要があるだろう。
雨も曇りと同じように撮る