撮影時のコンディションとして最も基本的で重要な要素は「光」です。撮影者は光が足りなければ照明を用意し、明るすぎればフィルターなどで露出を調整します。光の当て方一つとってもノウハウがあり、撮影者にとって光の使い方、付き合い方は永遠のテーマといえるでしょう。
「自然光だけで美しい ポートレートのつくり方」では、私たちの最も身近にある自然光だけを使ったポートレート撮影をテーマとして、基本的な考え方やノウハウを作例とともに解説しています。
本記事ではChapter1「写真は光と影」より、自然光のみで撮影に臨む理由について解説します。
自然光だけでシャッターチャンスを大事にする
ポートレートでは、試行錯誤の中でいい瞬間をとらえたい。そのためにはカメラ1台で自然光だけで撮るのが理想だ。
ポートレートには自然光が基本だと僕は思っている。それは、カメラ1台で撮るということだ。人によっては、レフ板を使ったりストロボを使ったりして、光をコントロールする。それに対して本書では、そういった機材を使わずにカメラ1台で自然光で撮る世界を紹介している。
その理由は、一瞬をとらえたいからだ。ここまで書いてきたように、ポートレート写真ではモデルをどう撮ればいちばん輝くのかを考えて撮る。場所や背景を考えたり、そのときの天気や明るさを考慮したり、構図や光の向きなどを工夫する。さらに、会話して雰囲気を作る。そうした一連のことを現場でいろいろ試行錯誤して、さまざまなバリエーションで何枚も撮影する。
撮影の様子
そうした中で、モデルの表情や動きのいい瞬間、自分の心が動く瞬間を逃がさずにシャッターを切りたい。そのためには、カメラ1台で撮る必要がある。レフ板を立てるとなると、人ももう1人必要になるし、撮影も大がかりになる。ストロボを使うとなると、セッティングや調整が必要になる。すると、いい瞬間をとらえたポートレートを撮るというのが難しくなる。僕の中のイメージでは、自然光だけで勝負しないと、自分の理想とする瞬間が撮れないと思っている。
ただし、自然光では与えられたもので勝負しなくてはならない。そこが難しい部分でもあり、楽しい部分でもある。