撮影時のコンディションとして最も基本的で重要な要素は「光」です。撮影者は光が足りなければ照明を用意し、明るすぎればフィルターなどで露出を調整します。光の当て方一つとってもノウハウがあり、撮影者にとって光の使い方、付き合い方は永遠のテーマといえるでしょう。
「自然光だけで美しい ポートレートのつくり方」では、私たちの最も身近にある自然光だけを使ったポートレート撮影をテーマとして、基本的な考え方やノウハウを作例とともに解説しています。
本記事ではChapter1「写真は光と影」より、光を選ぶときの視点について説明します。
大事なのは機材よりも光 いい光で撮影できれば写真はよくなる
自然光で撮る写真では、雰囲気に合わせた光を選ぶことが一番重要だ。
なんでもない住宅街でもいい光があれば十分
住宅街の白壁
機材と光のどちらが重要かと聞かれれば、僕はいい光が重要だと答えるだろう。割合としては、光が8~9割だと言っていいかもしれない。
「住宅街の白壁」の写真は、なんでもない住宅街だが、すごく光のとおりがよかったのでこの場所で撮った。
住宅街でも、高い建物があって光が入りにくいこともある。オフィス街だと光が遮られてしまうことがあるし、繁華街だと看板などがあってろいろいろな色の光がこぼれてくることもある。そのため、僕の求めている透明感のある光が入ってくることがあまりない。
この場所は、ちょうど透明感のある自然光が入ってくる場所で、モデルの座っている場所も白い壁があった。白い壁や白い床は肌の色などをきれいにしてくれる。そうした自然光がきれいに入ってくる場所だと思って選んだ。
暗い中にさしこむ光
光は千差万別
ガラス越しの光
さきほど、光が8~9割だと書いた。使用するカメラが、プロ用のフラッグシップモデルなら描写は繊細で美しいし、ノイズも出にくい。しかし、同じ場所の同じアングルで、フラッグシップと入門用のカメラとで撮影したとする。その違いが一発でわかるかというと、写真に慣れている人でもなければ、それほどわからないのではないだろうか。
それに対して、光は、その種類や方向によって写真の印象を大きく変えるし、千差万別の特徴を持っている。たとえば、柔らかい雰囲気を撮りたいときに、真夏の昼間の強い順光では撮れない。そのように光は思うようにいかないもので、だからこそ工夫のしがいがある。
冬の夕日