写真撮影の道具たるカメラはその誕生以来、様々な進化を遂げてきました。それはカメラ自体が持つ機能だけでなく、被写体と直接相対するレンズも同様であり、長い歴史の中で、多くの交換レンズが生まれ、今なお撮影に用いられています。昨今、マウントアダプターの普及に伴って、最新のカメラで古いレンズを使う楽しみ方も広く知られるようになりました。
「オールドレンズ 銘玉セレクション」では、国内外のオールドレンズを外観写真や作例とともに紹介。そのレンズが開発された時代における新規性や立ち位置、技術的な背景など、オールドレンズにまつわる知識を深めることができる一冊となっています。
本記事では第3章「再評価される銘玉」より、「FUJI PHOTO FILM X-Fujinon 55mm F2.2」の作例と解説を紹介します。
独特な構成による独特な描写の「FUJI PHOTO FILM X-Fujinon 55mm F2.2」
Xフジノン55ミリF2.2はフジフイルムの35ミリ判カメラ「フジカAX」用の標準レンズだ。フジカの中でも特にエントリークラス用のセットレンズとして用意されたこのレンズはコスト軽減を目指した結果、他のメーカーにはない独特なレンズ構成にたどり着いた。
テッサーと同じ4枚レンズながら貼り合わせ面をなくし、さらにテッサーよりも明るいF2.2を実現した。このユニークなレンズ構成のフジノンの後ボケは硬めで「2線ボケ」や「バブルボケ」的な後ボケを見せる。移りもビビットで虹ゴーストも出やすい。面白いレンズであるがAXマウントというフジの独自マウントを採用しているため、アダプターの選択肢が少ない。よりメジャーなM42マウントを採用したバージョンもある。
しかしこのレンズは鏡胴がやわらかいプラスチックでできており、鏡胴に亀裂が入っているものが多い。またレンズの描写はやややわらかく虹ゴーストが出にくいといった描写の違いもある。