創作において物語を動かし、表現するキャラクターには、しばしば世界観や物語を象徴するデザインが適用されます。そこには本人の性格や服装、持ち物だけでなく、時にはキャラクター自身の「種族」も含まれており、動物などをモチーフにしたキャラクター造形も珍しいものではありません。
「獣人・擬人化 人外デザインのコツ」では、動物をベースとしたキャラクター造形の方法論とともに、キャラクターの作例を解説。擬人化の際に重要な特徴の捉え方やデフォルメの度合い、動き表現の「人らしさ」「動物らしさ」の出し方など、実際に物語の中でキャラクターを動かす上で把握しておくべきポイントを詳しく知ることができます。
著者は漫画作品「人馬」やゲーム「モンスターハンター」シリーズの3Dモデリング、キャラクターデザインなどに携わっている墨佳遼さん。
本記事では第三章「鳥類・爬虫類の擬人化」より、爬虫類キャラクターの造形に役立つ描写の調節方法について解説します。
爬虫類の特徴をキャラクターに活かすには
ポイントは、爬虫類の特徴と人間的な表情を自分なりにブレンドすること。観察ができていれば、あとは方法を身につけるだけです。観察で得た形を組み合わせたり、情報量を調節したりして「コレ」と思える表現を探しましょう。
人間の表情を爬虫類の顔に重ねる
爬虫類の擬人化には、人間的な表情が不可欠です。表情筋がない分、人に伝わるだけの感情表現を爬虫類の要素のみで行うのは難しいからです。横付きの目や長い鼻づら、毛のない頭部など、人間と違う要素はそのままで、眉間や口まわりのしわ、唇で表情をつけていきましょう。
口まわりのアイデア
耳まで大きく裂ける口が爬虫類の特徴。人の顔とみ合わせると蛇感を強調できます。
裂けた口は笑ったように見えるので、それを抑えたい時は上顎の鱗で口元を隠すこともできます。口を開けた時のギャップ演出にも使えますね。
パーツのアイデア
鱗やヒレ、角をまつ毛や襟、耳などのパーツに見立てると、硬質感を残しつつ性別や印象を変えられます。
男性図
女性図
皮や鱗のアイデア
表情は同じでも、皮や鱗の逆立ちなどで感情の変化やキャラクター性を演出できます。
鱗の情報量を調節する
爬虫類の鱗は、人間の爪や髪と同じケラチン質でできています。正しく描こうとすると細かくごつごつしていて大変ですし、人によっては嫌悪を抱きかねません。それを回避し、鱗を繰り返し描くためには情報量を調節する方法があります。
1. 目立たせる
鱗をあえて大きく目立つように描き、かっこいい特徴にします。流れに沿って自然に描くのであれば、図のように小・中・大・中とサイズを変え、なじませるようなシルエットの流れを意識しましょう。
2. リアルに描く
塗りつぶしてシルエットにすると印象がわかりやすくなりますね。描きたいキャラクターに合ったボリュームや情報量を考えれば、どんな要素も味になってくれます。
3. なめす
関節(動く場所)の鱗を少しとがらせ、それ以外は素体のラインに戻します。シルエットは鱗を小さな線の集合にすると、情報量が少なくすっきりした印象になります。