獣人・擬人化 人外デザインのコツ
第1回

漫画・アニメ・ゲームのために描く基礎知識 好きなモチーフをスケッチするコツは「脳にだまされないこと」

創作において物語を動かし、表現するキャラクターには、しばしば世界観や物語を象徴するデザインが適用されます。そこには本人の性格や服装、持ち物だけでなく、時にはキャラクター自身の「種族」も含まれており、動物などをモチーフにしたキャラクター造形も珍しいものではありません。

獣人・擬人化 人外デザインのコツ」では、動物をベースとしたキャラクター造形の方法論とともに、キャラクターの作例を解説。擬人化の際に重要な特徴の捉え方やデフォルメの度合い、動き表現の「人らしさ」「動物らしさ」の出し方など、実際に物語の中でキャラクターを動かす上で把握しておくべきポイントを詳しく知ることができます。

著者は漫画作品「人馬」やゲーム「モンスターハンター」シリーズの3Dモデリング、キャラクターデザインなどに携わっている墨佳遼さん。

「人間とは違うなら、では違うとされる人間とは何か? 違うというなら、差異になる箇所はどこなのか。(中略)人外を描くことで、より人を描ける。より自分の知らない世界に興味を持てる。素晴らしいモチーフです」(第一章 漫画・アニメ・ゲームのために描く基礎知識「人外とはそもそも何か?」より引用)

本記事では第一章「漫画・アニメ・ゲームのために描く基礎知識」より、対象への理解度を上げるスケッチのコツを紹介します。

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獣人・擬人化 人外デザインのコツ

基礎スケッチのポイント

キャラクターづくりには欠かせないスケッチの方法です。脳の考え方の癖に負けない視点の持ち方、形や動きの捉え方と楽しくスケッチを続けるコツを学びます。

赤い箇所はよく動き、それ以外の箇所は動きが少ない。

スケッチの目的は「うまい絵を描く」ことではなく、「対象への解像度を上げる」こと。うまく描こうと意識すると、脳は「こうした方がいい」と噓をつきます。なので、スケッチでは対象をただ淡々とよく観察し、ポイントを見抜くことが大切です。例えば、脊椎動物の筋肉は骨に依存しています。筋肉は情報量が多い部分ですが、その奥にある骨格(凹んだり伸びたりしない箇所)をポイントとして押さえるよう意識してみましょう。

形のスケッチ

人は物事を複雑にするのが得意です。だから難しい細部にばかり目が行きやすく、すぐに「難しい」「大変だ」と考えてしまいがちなのです。シンプルに捉えることはとても難しいですが、習得できればあらゆる「複雑の奥にある骨格」を見抜くことに応用できます。

スケッチ時に見るポイントの例。

動きのスケッチ

動きと形は連動しているので、まず動きは動きのスケッチ、次に形のスケッチを交互にしてみましょう。両方を行き来すると、片方だけを続けるより対象の表現の解像度が上がるスピードが速くなります。ドキュメンタリー映像などを一時停止すれば、珍しい動物のスケッチなども可能です。

「何百回描いても飽きない大好きなモチーフ」を見つける

「あなたは○○ばかり描いているね」と言われた時に「その通り!」と堂々と言えるモチーフがあれば、それは幸福以外の何物でもないです。僕の場合は馬をよく描きます。好きということももちろんありますが、長い体毛や羽毛がない馬はデッサンが一カ所崩れると全体が崩れる究極のバランス生物であり、一切ごまかしがきかない、とても難しい動物です。だから練習にはもってこい。「馬が描ければどんな動物も描ける」というのも言い過ぎではないモチーフなんです。


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