撮影した写真を他者に見せる目的は様々です。ただ記録として見せるならば「撮って出し」でも十分ですが、そこに撮影者が持った感情や、直接関係ないなんらかの意味合いを乗せたいと考えたとき、それはたとえ最終的に何も手を加えなかったとしても、表現を試みたことにほかなりません。
画面の色合いは写真や映像の印象を一変させます。例えば映画の画面をよく見てみると、シーンによっては現実の風景とはかけ離れた色合いで表現されていることに気づくでしょう。こうした映画的なカラー表現は、しばしば写真の調整でも用いられます。
「シネマティック・フォトの撮り方」では、写真に映画的な演出を加えることを大前提に、撮影時に留意すべきポイントや編集方法、鑑賞する際の心構えも解説。著者の上田晃司さんは写真と映像の両方で作品の撮影を続けており、静止画の画作り解説を主たるテーマに据えた本書の製作においても、映像製作の考え方を採用しています。
本記事ではChapter3「シネマティック・編集方法」より、作品を暖色および寒色へ調整する際に注意すべきポイントを抜粋して紹介します。
暖色と寒色の方向性を考える
筆者は夕景や早朝はオレンジ系、都市風景はブルー系の仕上げにすることが多い。シーンによって異なるが、色味の方向性を大きく分けると、暖色系と寒色系がある。Camera Rawの現像で方向性を決めるときの参考にしていただきたい。
暖色仕上げのポイント
暖色を綺麗に表現するには、色温度と色かぶり補正の調整が重要だ。RAW現像ソフトの色温度設定の数値を変更して調整する。一般的には見た目の色温度は5500Kで、それより数値を大きくすると暖色が強くなる。作品は香港の夕景スナップ。現像で色温度を10000Kに設定して大胆に暖色寄りにした。また、色温度だけ数値を大きくすると少し濁る場合があるので、色かぶり補正でマゼンタを少し強めにしてクリアな空気感を表現する。
寒色仕上げのポイント
寒色にする場合は、色温度を5500Kよりも小さくする。青系に振る場合、あまり色温度を極端に低く設定すると、全体がただ青い写真になってしまう。慎重に100Kずつ下げながら、ベストな青みになるように調整しよう。また、カメラのWBで設定した青みがイメージと違う場合は、RAW現像時にHSLの色相でブルーのパラメーターを調整し、青の雰囲気を変えてみよう。筆者はややアクアをグリーン寄りにすることが多い。
玄光社オンラインストアにおいて、著者の上田晃司さんが作成したCUBE形式のLUTファイルを販売中です。本連載を参考にシネマティック・フォトを試してみたいとお考えでしたら、ぜひ購入をご検討下さい。