アニメーション作品において、ある事象や現象の「動き」を表現するにあたっては、主体となる登場人物や物体を動かすほかに、動きに伴って環境に変化が起きたことを示す「エフェクト」の描写が必要です。
作品世界で起きた現象を表現するのにきわめて重要な要素でありながら、それ単体では注目されにくい「エフェクト」。アニメーターは現実に起こりうる現象から、物理法則を無視した表現にいたるまで、あらゆるシーンで説得力のある視覚効果を描く必要があります。
「アニメーションのエフェクト作画テクニック」では、「弱虫ペダル GLORY LINE」や「楽園追放 -Expelled From Paradise-」などの作品でエフェクト作画監督をつとめたアニメーターの小澤和則さんが、様々なエフェクトの作画技術を伝えています。「炎」「水」「風」「光」「爆発」などのエフェクトについて動感を出すコツを解説しながら、「炎+煙」など、複数のエフェクトを組み合わせて見せる表現方法にも言及しており、アニメ作画の幅を拡げる実践的な内容です。
本記事では、Chapter2「水」より、「小さな泡」を表現するためのタイムシート(用語の意味は第1回参照)の打ち方についての解説を紹介します。
タイムシートの打ち方
泡を描く時のタイムシートの打ち方例をふたつ紹介します。A、BとあるのはAセル、Bセルで、ふたつのセルを重ねて表示することを表しています。まず左側は普通に表現した場合です。1と2の原画を使って2コマ打ちで繰り返し描いていきます。これでも十分に泡には見えます。右は1と2の原画を交互に見せています。
Aセルに泡がある場合、Bセルのほうは空セル(何も描いていないセル)にしています。同様にBセルに泡がある場合はAセルのほうを空セルにしています。これを繰り返し見せると、泡が激しく動きながら(ぶれながら)上に上がっていくように見えます。泡はハイライトの位置やフォルムを変えておくとさらに動きがあるように見せることができます。
原画1
小さな泡は賑やかし程度に入れる場合は、1か2のどちらかを使って、あとは中割り3枚くらい描いて下から上へ送っていけばOKです。
僕がよくやる手法は、1と1の泡のフォルムと位置を少しずらした2を用意して、タイムシートで1と2を入れたり抜いたりすることで、揺れながら上っていく泡を表現します。実際の泡ってなかなか目にする機会は無いのですが、ランダムに揺れ動きながら上がっていくものなので、その辺を意識しておくのが大事です。
原画2
泡の位置決めについて
中割りの場所を計算して原画を下のように配置することで、1コマ打ちのフルアニメーションのように泡がぶれながら上に上がっていきます。