アニメーションのエフェクト作画テクニック
第1回

アニメーター小澤和則のエフェクト作画のテクニック「炎の動き」を自然に表現する方法。


アニメーション作品において、ある事象や現象の「動き」を表現するにあたっては、主体となる登場人物や物体を動かすほかに、動きに伴って環境に変化が起きたことを示す「エフェクト」の描写が必要です。

作品世界で起きた現象を表現するのにきわめて重要な要素でありながら、それ単体では注目されにくい「エフェクト」。アニメーターは現実に起こりうる現象から、物理法則を無視した表現にいたるまで、あらゆるシーンで説得力のある視覚効果を描く必要があります。

アニメーションのエフェクト作画テクニック」では、「弱虫ペダル GLORY LINE」や「楽園追放 -Expelled From Paradise-」などの作品でエフェクト作画監督をつとめたアニメーターの小澤和則さんが、様々なエフェクトの作画技術を伝えています。「炎」「水」「風」「光」「爆発」などのエフェクトについて動感を出すコツを解説しながら、「炎+煙」など、複数のエフェクトを組み合わせて見せる表現方法にも言及しており、アニメ作画の幅を拡げる実践的な内容です。

本記事では、Chapter1「炎」より、「燃えさかる炎」の描き方についての解説を抜粋して紹介します。また、解説文の中で使われるアニメ―ション業界用語についてもこの記事に掲載します。

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アニメーションのエフェクト作画テクニック

燃えさかる炎

これはその場で燃えさかる炎です。炎の場合、動画も含めて大体8枚くらいでリピートすればそれらしく見えると思います。例えば原画3枚であれば、中に2枚動画を入れるといったイメージです。描くポイントとしては、炎の内と外の温度変化に気をつけること。

あとは下から上へ立ち上って消えていくという表現部分ですね。たまに違うシルエットを入れることでより自然な炎に見えます。

1~3枚目までの絵をリピートさせることで小さな炎を表現しています。4枚目以降はそこから大きな炎になった場合の表現になります。

4枚目以降は炎のシルエットを下から上に送るような形で描いています。炎の固まりが上に昇るイメージです。上に上がりきったところで炎を消して、また下から上へとシルエットを送るのを繰り返します。

炎の温度差に注意。蝋燭の場合、内側の温度が高く、外側の温度が低くなります。2段階で表現するのであれば、温度の低い内側は黄色、外側の温度が低い部分は赤にします。

たまに違うシルエットの炎を入れることでより自然に見せることができます。

本書で使用するアニメーション業界用語

本書では本文中にアニメーション業界用語が出てきます。以下に各用語に関して解説していますので、併せて読んでください。

色トレス
黒以外の色を使ってトレスすること。基本的には色鉛筆を使って描かれることが多い。ハイライトを入れる際などに用いられる。例えばハイライトの場合、仕上げ作業の際にキャラクターとは別個に彩色するので、どの部分にハイライトを入れるか指示するために描かれる。

送る
原画から次の原画へと動作をつなげていくこと。

オーバーラップ (OL)
表示されている絵が段々と薄くなり、その上に次の絵が徐々に濃く重なってくる技法。

空セル
何も描かれていないセルのこと。

コマ打ち
アニメの1秒間は通常24コマで構成されており、その24コマのうち、同じ絵を何コマ表示するかを示す用語。1コマ打ちの場合、1コマごとに違う絵を表示する。2コマ打ちの場合、2コマ同じ絵を表示、3コマ打ちであれば3コマ同じ絵を表示するという意味になる。

白コマ・黒コマ
1コマだけ白いコマを入れること。主に爆発のシーンで使われ、爆発の直前に白コマを入れることでより爆発を印象づけることができる。同様に黒いコマを使った黒コマ(ショックコマとも呼ばれる)もある。

スライド (SL)
セルや背景などの素材を横にスライドさせて(引いて)撮影する技法。

タイムシート
時間経過に沿ってどのセルが入るかやセリフのタイミングなどを記入する用紙。この用紙に従って撮影が行われる。一般的に1秒間を24コマとして計算している。

ダブらし (Wラシ、WXP)
二重露出のこと。サングラスのレンズなど、透けた感じを演出するための技法。例えば透かせる素材が無い状態で50%、透かせる素材がある状態で50%の露出で撮影し合成すると、透かせたい素材のみ50%の露出となり、透けた状態に見える。

T光
透過光の意味。現在はAdobe After Effectsなどのソフトウェアにより人工的な光を入れるが、以前は撮影台を使い、実際の光を素材に当てていた。素材に空けた穴から光を直接カメラに写し込む技法である。色によって白T光、白黄T光などがある。

ディレイ
前後のコマをダブらせること。

中割り
原画と原画の間に動画を入れること。

フェードイン/フェードアウト( FI/FO)
フェードインは画面上に徐々に絵が現れてくる技法。フェードアウトはその逆で、徐々に絵が消えていく技法。

フリッカー
拳を握り締める場面や身体が震える場面などで使われる技法。わざとランダムに前のコマに戻したり先のコマに進めたりすることで震えているような表現をする。


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