アニメーションのエフェクト作画テクニック
第2回

炎を炎らしく見せるコツは「丸み」と「尖り」の併用

アニメーション作品において、ある事象や現象の「動き」を表現するにあたっては、主体となる登場人物や物体を動かすほかに、動きに伴って環境に変化が起きたことを示す「エフェクト」の描写が必要です。

作品世界で起きた現象を表現するのにきわめて重要な要素でありながら、それ単体では注目されにくい「エフェクト」。アニメーターは現実に起こりうる現象から、物理法則を無視した表現にいたるまで、あらゆるシーンで説得力のある視覚効果を描く必要があります。

アニメーションのエフェクト作画テクニック」では、「弱虫ペダル GLORY LINE」や「楽園追放 -Expelled From Paradise-」などの作品でエフェクト作画監督をつとめたアニメーターの小澤和則さんが、様々なエフェクトの作画技術を伝えています。「炎」「水」「風」「光」「爆発」などのエフェクトについて動感を出すコツを解説しながら、「炎+煙」など、複数のエフェクトを組み合わせて見せる表現方法にも言及しており、アニメ作画の幅を拡げる実践的な内容です。

本記事では、Chapter1「炎」より、「火柱」の描き方についての解説を抜粋して紹介します。

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アニメーションのエフェクト作画テクニック

火柱

火柱と渦巻いている炎です。素材としては奥の火柱と手前の渦巻いている炎を分けて描いて重ねています。これに賑やかしとして風を薄くさらに重ねれば勢いよく燃えさかる火柱を表現できると思います。火柱のほうは右左どちらかに方向性を持たせて回転しているように描きます。手前の渦巻く炎もその回転に合わせ回っているように描きます。勢いでちぎれているように描くとそれらしくなります。僕の場合、火はあと3~4枚描いて全部原画でやってしまいますね。風の章で描いている竜巻も原理は基本的に一緒ですので、そちらも参考にしてみてください。

火柱は渦巻いている部分を斜めに描くことで、渦巻いている印象と上昇気流で上に昇っている印象を与えます。併せて中の黄色の部分(温度の高い部分)を下から上に送っていくことでさらに炎が渦巻きながら上へと昇っている状態を表現できます。

のマークは、それぞれ炎を左から右に送っていることを表しています。中割りを描いてもらう時の動きの幅の参考にするためのもので、描いておくと中割りの人の目安になり、作業がしやすくなります。

手前に入れる炎は大胆な形に描いたほうが勢いを表現できます。炎のシルエットを上に送るイメージで描くと良いです。

炎は尖っているのと丸いのを併用して描くとより炎に見えます。尖った炎ばかりだと逆に炎には見えなくなってしまいます。

下は火柱に風のエフェクトを合成したところ。


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