1981年から2011年にかけて、135回にわたって打ち上げられた有人宇宙船、スペースシャトルは、30年におよぶ歴史の中で、国際宇宙ステーションの建設をはじめ、ハッブル宇宙望遠鏡の整備や探査機の放出、宇宙環境における科学実験など、様々なミッションをこなしました。
「SPACE SHUTTLE 美しき宇宙を旅するスペースシャトル写真集」では、スペースシャトル「コロンビア」、「チャレンジャー」、「ディスカバリー」、「アトランティス」、「エンデバー」、そして実験機「エンタープライズ」のミッション中に記録された、よりすぐりの瞬間を掲載しています。著者はルーク・ウェズリー・プライス氏。監修はJAXAで宇宙飛行士選抜試験などに関わっている柳川孝二さん。
本書のチャプターはミッションのフェーズに見立てて「発射台」「打ち上げ」「宇宙にて」「着陸」の4つに分けられていますが、本記事ではそれぞれの章からいくつかの写真をキャプションとともに抜粋して紹介します。
挑戦
1977年、NASAは原型スペースシャトル・エンタープライズの一連の試験を行なった。滑走路への進入・着陸試験(ALT)では、1981年4月の実機型コロンビアの地球周回飛行の準備として、飛行特性と空力特性を検証した。
ALTの間、エンタープライズはシャトル輸送用ボーイング747型機の背中に載せられ、滑走路での走行実験と係留した状態での飛行を何度か繰り返した。一連の試験が成功すると、次に、5回の操縦飛行実験を行なった。適切な高度に達すると、飛行士2人が乗るシャトルは輸送機から切り離され、滑空飛行をしてカリフォルニア砂漠にあるエドワーズ空軍基地に安全に着陸する。エンタープライズは実際の宇宙飛行用としては設計されておらず、ダミーのエンジンと機能しない耐熱タイルを取り付けていた。
この原型スペースシャトル・オービターは、当初はコンスティチューションと名付けられる予定だったが、国民からの強い要望により、“宇宙に挑戦し続ける”ドラマ『スタートレック』の宇宙船エンタープライズ号にちなんだ名前となった。
エンタープライズに搭乗した飛行士
フレッド・W・ヘイズ・ジュニア、C・ゴードン・フラートン、ジョー・H・エングル、リチャード・H・トルーリー
発射台
STS-134
2011年5月16日-6月1日
フロリダ・ケネディ宇宙センターで、最終の宇宙飛行に向けて準備中のエンデバー。巨大なスペースシャトル組立棟(VAB)にある大型巻上げ機でオービターを吊り上げ、天井の高いハイベイに移動する。そこで、エンデバーは外部燃料タンクと固体補助ロケットと結合されてから、25回目の最終ミッションに向けて発射台へ行く。
STS-121
2006年7月4日-17日
ディスカバリーがケネディ宇宙センターのスペースシャトル組立棟から悠々と現れ、発射台までの長くてゆっくりとした移動に備えている。このミッションでは、国際宇宙ステーションへの物資運搬と修理作業のほか、コロンビアと勇敢なクルーを失った2003年の悲劇的な事故を受けて導入された新しい安全・修理技術の試験を行なう。
STS-6
1983年4月4日-9日
フロリダ・ケネディ宇宙センターで、NASAの最も新しいオービターがゆっくりと39A発射台に向かう。チャレンジャーと遠く離れた発射台が、霧の絨毯の上に浮かんでいる。打ち上げは当初1月に予定されていたが、主エンジン3基に問題が見つかり、1基は交換、2基は修理が必要となった。この写真は1982年11月に撮影された。
STS-1
1981年4月12日-14日
初の宇宙飛行を前に、定刻に姿を現したコロンビア。STS-1は有人で飛行する新型NASA 宇宙機の処女飛行だった。
打ち上げ
STS-131
2010年4月5日-20日
ディスカバリーが早朝の空に力強く飛び立ち、ケネディ宇宙センターの39A 発射台が煙に包まれる。7人のクルーは、物資と多目的補給モジュール・レオナルドを国際宇宙ステーションへ運んだ。モジュールには新しいクルー用寝室と実験ラックが搭載されている。
STS-64
1994年9月9日-20日
夕方になったばかりのフロリダの空で、ディスカバリーの固体補助ロケットが点火し、近くを飛ぶカモメ驚かせている。スペースシャトルの64回目のミッションで、ディスカバリーの19 回目のフライトが始まった。
STS-41-B
1984年2月3日-11日
フロリダの真っ青な空を、一直線の航跡を残しながらチャレンジャーが突き進む。スペースシャトル全体では10回目、チャレンジャーでは4回目となるミッションだ。このミッションは、ブルース・マッカンドレス2 世が有人機動ユニット(MMU)を使い、命綱なしの宇宙遊泳に成功したことで大きな称賛を浴びた。
STS-131
2010年4月5日-20日
順調な打ち上げ後、外部燃料タンクはスペースシャトル・ディスカバリーから切り離される。やがて地球の大気圏に突入すると、極度の高熱のためにばらばらに分解する。
宇宙にて
STS-120
2007年10月23日-11月7日
雲がかかる青と白の地球を背景に、スペースシャトル・ディスカバリーが、ランデブー・ドッキング操作の間、国際宇宙ステーション(ISS)に近づく。ディスカバリーの貨物室に、ISSを構成する大きな第2結合モジュール・ハーモニーが見える。
STS-71
1995年6月27日-7月7日
ロシア宇宙ステーション・ミールに連結したアトランティスを横方向からとらえた魅力的な1枚だ。このミッションで、アメリカのシャトルがはじめてロシア宇宙ステーションとドッキングした。この写真は宇宙船ソユーズに乗るロシア人宇宙飛行士が撮影した。
STS-118
2007年8月8日-21日
表情豊かな地球を背景に国際宇宙ステーション(ISS)に連結したエンデバーを宇宙遊泳中の宇宙飛行士が撮影。シャトルは新しい補給物資や重要な部品、右舷のS5 構造体などを輸送し、ISSの建設を継続した。
STS-121
2006年7月4日-17日
ディスカバリー下部の熱防護システム。シャトルは、危険に満ちた地球大気圏再突入の間のすさまじい高温に耐えられるように設計された耐熱タイルで覆われている。シャトルの表面を覆うために2万4000 枚以上のタイルを使っている。このタイルが無ければ、スペースシャトルは、再突入の際、燃え上がり、分解してしまう。
着陸
STS-2
1981年11月12日-14日
宇宙飛行士ジョー・H ・エングルとリチャード・H・トルーリーが2日間のミッションを終え、コロンビアはカリフォルニア砂漠にあるエドワーズ空軍基地に着陸する前の最終アプローチへの滑空に入った。この2度目のフライト後、スペースシャトルのミッションはどんどん長くなり、STS-5 以降では、さまざまなミッション目的をこなすためにクルーの人数も増えた。
STS-133
2011年2月24日-3月9日
最後のミッションを終えたスペースシャトル・ディスカバリーが、ケネディ宇宙センターの第15滑走路に最後の着陸をした。国際宇宙ステーションへの35度目のミッションだった。
STS-1
1981年4月12日-14日
処女飛行を成功裏に終え、エドワーズ空軍基地のロジャース乾燥湖の第23滑走路に駐機するコロンビア。ジョン・W・ヤングとロバート・L・クリッペンの2人だけのクルーは、170万キロメートルを越えて飛行し、地球軌道を37周した。真新しい宇宙機がその処女飛行で人間を乗せて飛んだのは、これがはじめてだ。
STS-44
1991年11月24日 -12月1日
エドワーズ空軍基地内ドライデン飛行研究センターの夕暮れ。7日間の国防総省(DoD)のミッション完了後に、アトランティスは、ミッション後点検を終え、NASAのボーイング747輸送機の背に載せられる。シャトルは、勇敢な新たなクルーと厳しい宇宙への大胆な冒険に挑む準備のため、ケネディ宇宙センターに移送される。