飛行機写真の教科書
第9回

日暈と飛行機を絡めて撮るにはどうしたらいい?知っておきたい「大気光象」の初歩

旅客輸送、物流、防災、救難、軍事など、様々な領域で活躍する航空機。「もしも空を飛べたら、何がしたいか」という人々の願いを具現化し、用途に特化した機体の機能美は、写真の被写体としてもきわめて魅力的です。

飛行機写真の教科書」では、「飛行機写真」の定義から航空機の種類や運用に関する基礎知識、飛行機撮影に適した機材、撮影場所の選定をはじめ、季節や状況ごとの表現テクニックまで幅広くカバー。

一定の専門的な知識と高い撮影技術を必要とし、難易度が高めの撮影ジャンルではありますが、マスターすれば写真表現に大きく幅を持たせられることは間違いないでしょう。

本記事では、Chapter5「よりよい飛行機写真を目指す」より、大気中の氷や水、太陽光や月光が相互に作用して生じる光学現象「大気光象」の解説と作例を紹介します。

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大気光象を知る

時として空を美しく彩る、虹や暈(かさ)などの気象光学現象。それらの美しい現象を取り入れて、よりよい飛行機写真を目指そう。

大気光象とボーイング767 新千歳空港:10月 内暈(22°ハロ)、幻日、幻日環、タンジェントアークが出現したので、着陸機と絡めて撮影。 Nikon D500 AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR(24mm相当)F8 1/3000秒 ISO100 WB晴天

大気光象とは

大気光象、または気象光学現象は、雨粒や氷晶がプリズムの役割をして、虹色に分光する現象である。天気雨のときに太陽の反対側に出現する虹や、薄雲がかかっているときに太陽の周りに内暈(うちがさ)ができるのはよく知られている。虹は太陽高度が42度より低い、朝夕の時間帯に見られるが、虹の視直径は84度相当なので、半円の全景を画面に写し込むためには20mm~24mm程度の超広角レンズが必要になる。

太陽の周りに見られる暈などの大気光象はハロとも呼ばれ、上層雲に含まれる氷晶がプリズムの役割をすることで現れる。出現頻度が高いものは内暈(22度ハロ)で、幻日や環天頂アーク、環水平アークなども比較的よく見られる。内暈の視直径は44度なので、24mm程度の広角レンズで全体が画角内に収まる。これらの大気光象を飛行機写真に取り入れる場合、広角レンズで作画できるところに限られる。スレッショルドで着陸機と絡めるか、タキシング機など、飛行機に接近できる条件での撮影がベストだろう。

内暈の上に環天頂アークが出現した。上の写真は、その環天頂アークをバックに飛ぶB737。

大気光象を取り入れる

太陽の周りに出現する大気光象
よく観測されるのは内暈(22度ハロ)や幻日で、次いで環天頂アークなど。環水平アークは太陽高度が高い時期に見られる。

虹が発生する原理
天気雨のときなどに見られる虹。太陽と反対側に出現するので、太陽高度が低ければ低いほど、大きな虹が見られる。

ハロ (太陽方向に出現する)
内暈、幻日、幻日環、上部タンジェントアーク。画面外には下部タンジェントアーク、上部/下部ラテラルアークも出現した。

虹 (太陽と反対側に出現する)
濃くて鮮やかな主虹の外側に、淡い副虹が出現することがある。24mmの画角で、半円が少しはみ出るくらいの大きさに写る。

虹とF-15DJ
虹は雨上がりなど、降水現象と直射日光が同時にある条件下で出現するので、出現時間は短い。そこに飛行機が絡むのはタイミングが重要だ。


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