趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第7章「写真表現を組み合わせる」より、あえて水平を崩して迫力を出す撮影方法を紹介します。
意図的に水平バランスを崩してダイナミックさを出す
香港のトラムを撮影しました。普通に撮影するとダイナミックさが出ないので、水平を大きく崩して撮影しています。また、ダイナミックさを強調するために16mmの超広角レンズを使いローポジション、ローアングルで遠近感を強調しました。
大きく大胆に画面を傾けるとダイナミックな写真になる
写真撮影において水平や垂直を意識することは重要ですが、どんなシーンにおいても水平と垂直を必ずとらなければならないかというと、そうではありません。
撮影を続けていくと、表現を広げていく必要があり、構図を崩すことも1つのテクニックです。とはいえ、やみくもに構図を崩すことは、写真の安定感を無くしかねません。
ではどのようにダイナミックさを表現するか考えてみましょう。この作例は意図的に大きくカメラを傾けて撮影しています。直線的な線や形をした被写体は構図を水平ではなく傾けることでダイナミックさや動きが感じられます。
通常、水平や垂直をしっかりと意識して撮影すると安定感が出ます。しかし、安定感のある写真ではダイナミックさは表現できません。あえて構図を傾けて不安定にした方が効果的です。大きく傾ける以外にも、写真の右上辺りから放射状に配置する構図を意識して、奥行き感を出すようにしました。さらにダイナミックさを強調するために、超広角レンズを使い、カメラをローポジション・ローアングルで構え、遠近感を強調しています。その結果、不安定な写真ではありますが、ダイナミックさを感じる1枚になったと思います。
構図を傾ける際には大きく傾けることを心がけましょう。微妙な傾きは意図的に感じられず、撮影時に意図していないのに傾いてしまったと思われることもあります。傾ける際は大胆に40~45度くらい傾けてみましょう。そうすることで、今までとは違ったワンランク上の表現ができるはずです。
撮影のポイント
カメラの傾きは約45 度
意図的に傾ける時はカメラを45 度くらい傾けると迫力がでます。さらに、ローポジション・ローアングルで撮影しました。
奥行きを強調する構図
一番遠くに見えるビル群までは約300mくらいです。そこから放射状に配置する構図を作りました。ピント位置はトラムで距離は5~6mくらいです。
水平で撮ると
作例と同じシーンで水平をしっかりと取り、アイポジション、水平アングルで撮影した写真です。安定感はありますが、ダイナミックさや動きはあまり感じられません。