趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第7章「写真表現を組み合わせる」より、ローアングルと透過光を使った表現を紹介します。
透過光で被写体を瑞々しく描く
きれいな若葉の透明感を出すために逆光で撮影しました。逆光で撮影すると、光がモミジの葉を透けて順光で撮るよりも、より生き生きと写ります。この透過した光により葉脈のディテールまでしっかりと表現できています。また、魚眼レンズを使い背景を広く入れながら遠近感をつけ、ダイナミックさを表現しました。
逆光を利用した透過光の撮影には、アングルと露出補正が重要
液体や葉っぱなど、光を通す被写体を撮る機会は多くありますが、実際に撮影してみると、被写体の透明感を表現するのは難しいものです。光を通す被写体を順光で撮ると、色は出ますが透明感は表現できません。しかし、逆光で撮影すると光が被写体を透過し、瑞々しく撮影できます。
では、作例を見ながらより透過光で被写体をきれいに撮影する方法を覚えましょう。作例は紅葉前の若葉です。美しい緑が印象的だったので透過光で撮影することにしました。光を透過させるには、光源が被写体の後ろにないといけません。太陽などの光源が被写体の真裏にくるように構図を決めます。つまり、逆光の状態にするわけです。
この撮影では、ダイナミックさを表現するために、特殊なレンズである魚眼レンズを使い、遠近感を強調しながら被写体にグッと寄って背景や太陽光を入れています。
この作例を撮るうえでのポイントは太陽の位置です。筆者は葉に明暗のグラデーションを付けたかったので、葉の先端が最も明るくなるようにアングルを調整しています。どうでしょう、緑色のグラデーションがとてもきれいに出ていると思いませんか。
ただし、カメラが一眼レフの方は注意が必要です。太陽を画面内に入れた状態で一眼レフのファインダーで見てしまうと目を傷つけてしまうこともあるので、ライブビューを活用しましょう。また、逆光条件で撮影すると暗くなりがちで、露出補正を行ってイメージどおりの明るさになるように調整しましょう。
撮影のポイント
被写体に近づく
カメラとモミジの距離は20cmくらいです。
見上げるローアングルで撮影
モミジの葉が少し高い位置にあったので、ハイポジション・ローアングルで撮影しました。
背景をぼかして遠近感を強調
モミジと背景の木までの距離は1~2mくらいありますが、魚眼レンズによる遠近感でより遠くに見えます。