キボリノコンノさんインタビュー
後編

キボリノコンノさんインタビュー【後編】〜木彫り作品「キボリ―メイト」の作り方〜

2023年8月、「キボリノコンノ作品集「キボリアル」」(玄光社刊)を上梓したキボリノコンノさん(以下コンノさん)。『見た人が驚き、そこから生まれるコミュニケーションがとても好きだし、何より嬉しい』というコンノさんは、身近な食べ物をモチーフに本物そっくりの木彫り作品を作っています。大丸東京店、大阪店での展覧会も大盛況のうちに終了したコンノさんのご自宅で、木彫りを始めたきっかけから食べ物へのこだわりなどを伺いました。

(前編はこちらから

キボリノコンノ作品集「キボリアル」

 

−作品制作について、技術的なことも少しお伺いしたいです。ルーターをはじめとした木を加工する高い技術はどのように身につけたのですか?

コンノさんが愛用しているミニルーター

コンノ:小学校6年生のとき、木で飛行機を作ったんです。コックピットを彫りたかったのですが、彫刻刀ではうまく彫れなくて、そのときに父がルーターを買ってきてくれて、自由な局面を彫る楽しさを知りました。

自由研究として小学校に提出したところ先生や友だちから「これは売っているキットを組み立てたのでしょう」と言われ、木材を削って作ったことを信じてもらえなかったという。

 

−透明感のある塗装も、コンノさんの作品の特徴ですよね。

コンノ: 塗装は学校の授業でしか経験がありませんでした。最初のコーヒー豆を作った当時は絵の具も持っていなかったんです。やったことがあるのは家具をDIY用のオイルで茶色にしただけ(笑)。

「透明」を感じさせる塗りは難しいんですよね。写真で撮った透明なものがあるじゃないですか。たとえばチェキのフィルムの紙は透明じゃないのに、チェキで撮った氷の写真は透明に感じる。写真に撮れば透明に見える塗りかたがあるのでは? と思って、写真を見本に塗ったんです。

作品「味付け海苔」透明フィルム部分は、木への塗装だけで表現されている。さらに透明フィルムと海苔の質感に違いをつけることでリアルさが増している。 キボリノコンノさんの「彫り」と「塗り」両方のセンスと技術の高さを感じさせる作品

いまは、木でガラスを作ろうと思っています。みんなも見たことがないから面白そうですよね。そこで新しいアイデアや技法も生まれます。僕は自分のできないことがあっても、How to動画やチュートリアル動画などは見ません。失敗した技法があっても、それは次の作品の技法になるんですよ。

たとえば納豆のネバネバ感は木に水分を含ませて、毛羽立つ、モサモサするのを利用することで、納豆の粘度になります。これは、あるとき絵の具を水で溶かして塗ったら毛羽立ってしまって失敗した! と思ったことがあって、これが納豆に生きているんです。

 

−コンノさんの作品を見たあとに、たとえば食事をしてパンを見たときに、あれ? これ木じゃないよね? と一瞬自分を疑ってしまうようになります(笑)。本物そっくりに作るというその観察力は、どうやって身につけたのでしょうか?

コンノ:観察力が生まれたのは、子どものころ虫が大好きだったからかもしれません。図鑑を見るのが大好きで、飼って観察し、模写していました。

コンノさんが小学校2年生のときに描いたトンボ

これが小学校2年生のときのトンボの模写です。関節や尻尾の凹凸まで正確に再現しようとしていたことがわかります(笑)。幼稚園のころもカマキリなど描いていましたね。そういう部分にこだわりが強くて、正解と違うのが許せないんです。だから、ご飯のできあがりと違う=冷めているというのも好きではないんですよね。漢字とかも四角い角の部分の位置が少しでも離れていたりすると、書き直すタイプでした。

−完成した作品は、コンノさんご自身が撮影もしているんですね。

コンノ:実は写真を撮っているときがいちばん楽しいんです。僕の木彫りが写真を撮ることで完成すると思っています。彫っているときに見えていなかったリアルさが、写真に撮ることで見えてくるんです。

最初はスマートフォンで撮っていましたが、表現が広がるのでデジタル一眼カメラを購入しました。LEDライトの定常光でライティングしています。お皿などは季節感も演出できますし、お菓子はそれを盛り付ける器もいろいろ集めて、作品ごとに変化もつけています。

LEDライト2灯によるライティングで自然光の雰囲気を作っている。

 

−これから未来に向けて、どんなふうに作品づくりをしていきたいと考えていますか?

コンノ:実は、いまはほんとうに先々のビジョンはないんです。いま僕に起きていることは、以前の僕には想像もできなかったことです。テレビに出させていただいたり、本を出すこともそうです。日々やっていることが新しすぎて僕自身もどこに辿りつくのかわからないと言ったほうが正しいかもしれません。

 

<キボリノコンノさんのアトリエ>

キボリノコンノさんは浜松の自宅にアトリエを構え、そこですべての木彫り作品を制作しています。取材時にアトリエを見せていただきました。

アトリエは、約4畳。コンノさん自身が動きやすいよう、とてもきれいに整理されており、さまざまな道具がすべてひと目でどこにあるかが分かるよう、整理、配置されている。

ベルトサンダーや電動ドリルなどの電動工具。

 

釘などの小物を入れたケースは、すべて100円ショップで買った部品で製作した。

 

電動ドリル用のドリルビット
ルーターのビット(先端工具)は摩擦により熱くなって木が焦げてしまうことがあるため、同じものが複数あり、交換しながら使用する。

 

木彫り作品を作る木材は家具を作る際に出る端材などを入手しており、檜(ひのき)が多い。いろいろなモチーフに対応できるように、厚みや幅の違う端材をさまざまストックしている。

 

キボリノコンノがひらめいた!

急遽、作品制作開始!カロリーメイトを木彫りでつくってみる!

コンノさんがご自宅にあるさまざまな食品、お菓子などをチェックし、カロリーメイトを木彫りで再現してくれました! 名付けて「キボリーメイト」! キボリノコンノ作品がどんなふうに作られるのか、メイキングをご覧ください。

 

1:測る

まずは、ノギスを使ってカロリーメイトの実物のサイズをしっかりと計測。ノギスは0.1mm単位で測ることができる。

厚さが近い木材が見つかる。

 

2:切る

端材をカットしていく。

3:じっくり見る

ホンモノのカロリーメイトとのサイズ感をチェック。コンノさんは、とにかくモチーフを観察する。

4:削る

木をカットしたらヤスリがけをする。使用しているのはRYOBIのベルトサンダー。ヤスリがけをしながらサイズを測り、実物と同じサイズになるよう調整していく。

5:測る〜削るの繰り返し

削る→測る→削る→測るを何度も繰り返していき、実物と同じサイズに近づけていく。

どうやら01ミリ単位で比較して、同じサイズになったようです。ここからは、各面を曲面にしていくため、さらにベルトサンダーで削っていきます。

微妙な角度をつけて曲面をつけていく。

6:表面の細かい部分を仕上げていく

 

最終段階。カロリーメイトに空いている穴は、ブロックをおいしく焼き上げるためのもの。全部で10個の穴があり、この穴があることで中心部まで熱を伝え、均一に火が通る。実物を正確に計測して木に穴を開けていく。

カロリーメイトの穴をルーターで慎重に掘っていく。

 

穴をよく見ると、直線的に開いているわけではない。入口付近は大きいサイズのビットに切り替えてなだらかな曲面をつくる。

実物の微妙な凹凸感を手で触りながら確かめ、平らな面に凹凸をつけていく。カロリーメイトは、単純に真っ平らな直方体ではなかったのだ。

カロリーメイトを木彫りでつくってみた!『キボリーメイト』メイキング ムービー

 

完成! あえて着色せずに木目と木の色を生かすことで、ホンモノそっくりなカタチ、木彫りの味わいもある作品に仕上がった。なんと完成まではたったの35分!

完成したら、撮影する。LEDのパネル型の定常光と、調光式のLEDライトを使用し、ライティングしている。カメラはソニーのα6600。レンズは主にE 30mm F3.5 Macroを使用している。

木彫り作品「キボリ―メイト」誕生!!

キボリ―メイト

 

「今晩、SNSでつぶやきますよ〜〜。みんなが驚いてくれるか楽しみ〜〜」と、いたずらっ子のようにワクワク感を隠せないコンノさん

 

キボリノコンノ作品集「キボリアル」

 

【インタビューの前編はこちら】

キボリノコンノさんインタビュー【前編】〜僕の木彫りは誰かのためのギフト〜

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