キボリノコンノさんインタビュー
前編

キボリノコンノさんインタビュー【前編】〜僕の木彫りは誰かのためのギフト〜

2023年8月、「キボリノコンノ作品集「キボリアル」」(玄光社刊)を上梓したキボリノコンノさん(以下コンノさん)。『見た人が驚き、そこから生まれるコミュニケーションがとても好きだし、何より嬉しい』というコンノさんは、身近な食べ物をモチーフに本物そっくりの木彫り作品を作っています。大丸東京店、大阪店での展覧会も大盛況のうちに終了したコンノさんのご自宅で、木彫りを始めたきっかけから食べ物へのこだわりなどを伺いました。

キボリノコンノ作品集「キボリアル」

 

コンノさんのこだわりが詰まったご自宅に伺うと、コンノさんご自身がお茶を入れてくれました。

−コンノさんはお茶にもこだわりがあると伺いました。

コンノ:僕はお酒も飲まないし、タバコも吸わないので、妻にはお茶は好きに買っていいと言ってもらっているんです。だから、いろんなお茶を買って、食事に合わせたり、そのときどきで楽しんでいます。静岡県生まれの母がいつもお茶を入れてくれていたので、自然にお茶好きになりましたね。

お茶は銘柄によりますが、入れる温度によって味わいがまったく違います。いちばんおいしく入れることのできる温度で飲んでいただきたいので、少し待ってください。

黙々とお茶を入れるコンノさん

コンノ:こちらはかぶせ茶で、55℃で入れています。お湯を沸かすポットはビタントニオのもので、温度設定を1℃単位でできるようになっているので、とても便利ですよ。注ぎ口が細く、長いのでコーヒーを入れる際にも使えます。

−これまで飲んできた緑茶とは思えない、爽やかな味です!

コンノ:でしょう? 甘味と旨味がしっかりとありますよね。お茶は値段ではなく、茶園で決まるんです。それこそ土づくりからしっかりとやっている茶園では、育て方で違います。幸い、静岡にはたくさんの茶園があって、茶園めぐりもします。愛をもってしっかりとお茶を育てているところでは、試飲の際にも2時間近くそのこだわりを話してくださるんですよ。熱湯でジャーっとお茶を入れてしまうようなことはありません(笑)。

−コンノさんは食べ物にもこだわりがあるそうですね。

コンノ:母がとても丁寧に食事を作ってくれたことが大きく影響していると思いますね。僕は兄弟が多いのですが、たとえば、それぞれの帰宅時間がバラバラでも、それに合わせて揚げ物を都度揚げて、できたてを食べさせてくれる母でした。だから、ちょっと冷めてしまっていたり、ちょっと水分が多かったりすると食べられないんです。冷たいまま食べるのは好きではなく、必ず温め直して食べますね。

キボリノコンノさんの木彫り作品

作品展「キボリノコンノ展」で展示された作品

 

−コンノさんが木彫り作家になる以前、会社員、公務員だったときのことを教えてください。

コンノ:大学を卒業して家具デザイナーを4年やっていました。やりたいと思って始めた職業でしたが、大量生産するものを作っていたこと、パソコン上でデザインするのではなく自分の手で作りたいという思いも大きくなり、違和感を覚え始めたんです。

地元に本当においしいピザを出してくれる、とても好きなピザ屋さんがあるのですが、シェフの方にどうやって職人になったのかを伺うと「40歳まで公務員をやっていた」と言うんです。さらにお話を伺うと「若いときはお金もないし、人間も成長できてないから、それを安定させるために公務員になって、それから職人になればいいと思った。40歳でナポリに修行にいって、職人になったんだ」と言われ、目から鱗でした。僕は職人さんや作家さんになるためには、最短ルートじゃないとダメだと思っていたので、初めて公務員を選ぶという道を知りました。そのころの僕は、本当にやりたいこともなかったし、趣味でも見つければいいのでは?と考えて、公務員試験を受けるために半年間勉強し、転職しました。

市役所に勤務し、防災・交通安全を市民に啓発する仕事をしていたので、仕事の1/3が市民向けに講座を開くというものでした。人前で話すことも好きでしたから、やりがいを感じていました。それを4年間やりましたね。

その後、異動になって事務仕事になり、人の顔が見えなくなってしまったことで、体調を崩してしまったんです。さらに趣味で通っていた卓球の練習場がコロナで閉まってしまい、本格的に不調になってしまって……。

そんな状況を知っている友人が、「昔から得意だったから、木で何か作ったら楽しいんじゃない?」と言ってくれて。

そう言われても、僕は何を作っていいかわからなかった。ずっと頭にはあったのですが、いざ作ろうと思ってもどうしていいか分からなくて。

家でコーヒーを飲んでいたときに、ふとコーヒー豆の質感が木に似ているなと思って、これを木で作ったら面白かったんです。

公務員時代にはじめて作った作品「コーヒー豆」

それをTwitter(現X)にアップしてみたら、♡いいねがついて、コメントもつき、コロナ禍で途絶えていた人とのコミュニケーションが生まれたんですよね。不調で仕事を休むことも続いていたので、自分にとって救いでした。

その後、うなぎパイを作って投稿したときに500いいねがついた。これは面白いと思いましたし、これからちゃんと発信していきたいと思いました。

Twitterでの投稿に500いいね!がついた「うなぎパイ」初期作品とは思えないほど完成度が高い。

 

−その頃はコンノさんの個人アカウントだったのですか?

コンノ:そうなんです。それで妹から「木彫りのアカウントを作った方がいいよ」ってアドバイスをもらいました。クリエイターアカウントがあった方が見る人もフォローしやすいですよね。ちょうど納豆を作ったタイミングだったので、すぐにアップしたくて、3秒で考えた名前が「キボリノコンノ」でした(笑)。

 

“キボリノコンノ”が生まれるきっかけとなった作品

「納豆」

 

「溶けかけの氷」

−妹さんだけでなく、ご家族からもアドバイスなどはあるのですか?

コンノ:兄や妹だけでなく両親も含め、家族がなければいまの僕は無いと思いますね。いまも作ったものは真っ先に家族に見せるんです。僕はチームコンノと呼んでいるんですが、兄や妹は、写真の撮り方やSNSでの投稿についてアドバイスをくれます。兄妹のグループLINEもありますし、両親とも毎日のように電話で話します。

ヨックモックのシガールを作ってアップしたあと、ヨックモックさんからご連絡をいただき、ヨックモックの藤縄社長とのランチ会を開いてくださったんです。

そのときに藤縄社長が言ってくださった言葉がとても強く心に残っています。
「コンノさんの作品は、僕たちの作っているお菓子に似ています。ヨックモックのお菓子を買う人は、誰かにプレゼントしたくて買ってくれる。だから、プレゼントとして選んでもらえるよう考えて作っているんです。コンノさんの作品はリツイート(リポスト)したくなる作品ですね。」

この言葉で、誰かに見せたくなる作品をこれから作っていきたいと気づかせてもらいました。

後編へつづく

キボリノコンノさんインタビュー【後編】〜木彫り作品「キボリ―メイト」の作り方〜

 

キボリノコンノ作品集「キボリアル」

 

 

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