星空写真の教科書
第2回

レンズ選びに迷ったら、星空写真の「標準」画角は24mm。明るい広角レンズであればズームも視野

星雲や惑星、夜空を埋め尽くす星空には、見る人の心を揺さぶるものがあります。誰しも一度は、星空を写真に記録したい、と考えるのではないでしょうか。

星空と地上風景の両方を構図に入れた写真は、一般的に星景写真と呼ばれます。主役はあくまでも星空ですが、地上の自然や建造物を写し込むことで、星空の魅力が引き立つことから、天体写真の中でも人気のあるジャンルです。

技術評論社が発売している「星空撮影の教科書」では、星空写真にまつわる様々なテーマを、著者で天体写真家の中西昭雄さんによる作例とともに解説。星空を撮影するにあたって必要となる機材から天球の動き、撮影に適した時間帯、場所の選び方、合成処理を前提とした撮影方法、海外遠征時の留意点にいたるまで、星空撮影の初心者からベテランまで、幅広いレベルの撮影者に役立つ一冊となっています。

本記事では、Chapter1「星空撮影の準備をしよう」より、星空撮影に向いた交換レンズについて解説します。

星空撮影の教科書 ~星・月・夜の風景写真の撮り方が、これ1冊でマスターできる! (かんたんフォトLife)

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1. 明るいレンズが必須

とても暗い星空を美しく撮影するためには、できるだけ明るく、絞り開放付近での性能がよい超広角~広角レンズが最適です。

星空はとても暗いために、高ISO感度撮影が得意なカメラが好適であることはすでに解説しました。そして、レンズもまた同様に、できるだけ明るいレンズ、すなわちF値の小さなレンズを選ぶことが重要です。しかし単に明るいだけではだめで、絞り開放付近での性能がよいレンズでなければなりません。

星空写真では、画面全体に星が写ります。星は理想的な点像ですから、星空を撮影するということは、まさにレンズテストをしているようなものです。レンズに収差があると、星は点像として写らず、特に画面の周辺部で星がいびつな形に写るコマ収差が目立ってしまいます。また画面周辺が中央部よりも暗く写ってしまう、周辺光量落ち(天文の世界では周辺減光とも呼ばれます)も目立ちます。このように、星空写真はレンズに対して非常に厳しい要求をしているのです。

さらに、明るいレンズは構図を合わせるときにも役に立ちます。ファインダーを覗いたときに、レンズが明るいほど星や地上のシルエットが見えやすく、構図を決めやすくなります。

Canon EF24mm F1.4L II USM

24mm F1.4というスペックのレンズは、星空写真撮影の標準レンズといってよいほど使いやすいものです。Canonはマニュアルフォーカス時代から24mm F1.4というレンズを用意しており、そのレンズを使いたいがためにCanon党になった星空写真ファンも多かったのです。

SIGMA 24mm F1.4 DG HSM

星空写真の標準レンズともいえる24mm F1.4は、多くの方におすすめしたいのですが、メーカー純正だとかなり高価になります。サードパーティのSIGMA 24mm F1.4なら、純正品の約半額と、ぐっと入手しやすくなります。

SIGMA 14mm F1.8 DG HSM

14mmという超広角レンズにも関わらず、F1.8という明るさを誇る唯一無二のレンズです。超広角レンズは広い範囲を一度に収めることはもちろん、近景を大きく取り込みながら、背景の星空を広く取り入れるという使い方ができる、とても使いがいのあるレンズです。

2. 被写体に合わせてレンズ(焦点距離)を選ぶ

撮影したい被写体に合わせてレンズを選ぶのは、一般の写真とまったく同じです。特に星空写真の場合、足を使って被写体との距離を調節することが不可能です。そのため、広い画角を収めたい=焦点距離が短い広角のレンズを選ぶ、対象を大きく写したい=焦点距離が長い望遠よりのレンズを選ぶという、とても単純な選択となります。

見上げた星空の印象に近い画角が得られる、つまり星空写真の標準レンズとも呼べるのは、焦点距離が24mm前後の広角レンズです。まずは、24mm前後の画角が得られ、なおかつ明るくて周辺像もシャープに写るレンズを1本用意してほしいと思います。

理想的には、F1.4クラスの単焦点レンズが望ましいといえます。24mmはズームレンズでもまかなえる焦点距離ですが、ズームレンズでは明るくてもF2.8クラスとなり、構図合わせのしやすさが若干劣ります。また、画面周辺部での結像性能を上げたり、周辺光量落ちを改善するのに1段くらい絞ることを考えると、可能ならば単焦点レンズを選択するのがおすすめです。

Canon EF35mm F1.4L II USM

35mmは、地上の景色を取り込んだ星空写真にはやや画角が狭いのですが、星座だけを撮影するならとても使いやすい焦点距離です。左の写真のように、BRレンズを用いたこのレンズは、星座写真に使うとすばらしい描写を誇ります。

SIGMA 20mm F1.4 DG HSM

24mmは確かに使いやすいけれど、もう少し広めの画角が好きという方には、この20mm F1.4をおすすめします。地上の景色を多く取り込みながらも、星空を広くフレーミングすることができます。24mm F1.4に比べると大柄で重く、前面にフィルターを取り付けられないのが残念です。

Canon EF16-35mm F2.8L III USM

かつてのズームレンズは、便利だけれども性能は単焦点レンズに及ばないというのが通例でした。しかし、最新の高級ズームレンズはすばらしい性能です。F2.8の絞り開放でも周辺まで美しい星像を示しますが、周辺光量落ちが大きいのが残念です。やはり1段は絞りたくなります。

 


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