星雲や惑星、夜空を埋め尽くす星空には、見る人の心を揺さぶるものがあります。誰しも一度は、星空を写真に記録したい、と考えるのではないでしょうか。
星空と地上風景の両方を構図に入れた写真は、一般的に星景写真と呼ばれます。主役はあくまでも星空ですが、地上の自然や建造物を写し込むことで、星空の魅力が引き立つことから、天体写真の中でも人気のあるジャンルです。
技術評論社が発売している「星空撮影の教科書」では、星空写真にまつわる様々なテーマを、著者で天体写真家の中西昭雄さんによる作例とともに解説。星空を撮影するにあたって必要となる機材から天球の動き、撮影に適した時間帯、場所の選び方、合成処理を前提とした撮影方法、海外遠征時の留意点にいたるまで、星空撮影の初心者からベテランまで、幅広いレベルの撮影者に役立つ一冊となっています。
本記事では、Chapter1「星空撮影の準備をしよう」より、星空の撮影に向いたカメラの選び方をご紹介します。
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1. フルサイズがベストな選択肢
星空撮影に最適な機材選びの第一歩は、なんといってもカメラ本体です。星空写真は被写体がとても暗いため、高ISO感度撮影が可能なカメラが最適です。
星空撮影で使用するカメラの性能に、AF性能や高速連写は求められません。高ISO感度に対応し、長秒撮影時にもノイズが少なく、画質がよいことが求められます。そのため、イメージセンサーのサイズが大きいほど有利になります。現状では、フルサイズのカメラがベストな選択肢といえるでしょう。
もちろん、さらにセンサーサイズの大きな中判カメラという選択肢もありますが、現状では価格や大きさ、対応するレンズの数などから、フルサイズカメラの汎用性や拡張性にはかないません。
また、APS-Cサイズやマイクロフォーサーズはだめなのか?というと、決してそんなことはありません。比較すればフルサイズの方が高画質が得られるのは確かですが、イメージセンサーの小さなカメラはその価格や、コンパクトなことから機動性を活かせるなど、数多くの利点があります。
2. 高ISO感度特性のよいカメラ
すでにイメージセンサーのサイズが大きい方がよいということをお話しましたが、その理由の1つとして、フルサイズのイメージセンサーほど高ISO感度特性がよいことが挙げられます。一般的にイメージセンサーは1ピクセルのサイズが大きいほど、光を多く取り入れることができ、ダイナミックレンジが広く、暗い被写体に強くなります。
また、高ISO感度特性を実現するにはピクセルサイズだけではなく、イメージセンサーを裏面照射式にしたり、画像処理を工夫したりと、カメラとしての総合的な性能が求められます。
とはいえ、高いISO感度を設定できるカメラが、必ずしも高ISO感度特性がよいというわけではありません。高ISO感度設定ができるからといって、画質もよいとは限らないからです。カメラ雑誌や天文雑誌の記事、ネット上のコミュニティを活用して、情報を収集してみてください。
3. バリアングル液晶が便利
カメラの設定やピント合わせ、撮影した画像を確認するための液晶モニターは、なんといってもバリアングル式が便利です。星空の撮影では、カメラを水平よりも上に向けることがほとんどのため、液晶モニターが固定式だと、かがみこんだ体勢から見上げるようにして液晶モニターを見ることになります。体に負担がかかるだけでなく、ピント合わせや画像の確認にも支障をきたすことがあります。
液晶モニターがバリアングル式であれば、そうした不便なこともなく、無理のない姿勢で撮影を行うことができます。また液晶の可動方向が上下のみのチルト式の液晶モニターでも、横構図での撮影であればバリアングル式と大差ない操作性が得られ、固定式よりもずっと使いやすくなります。
4. コンデジでもOK
星空撮影のための専用モード、「星空モード」機能を搭載したコンパクトデジカメは、初心者の方におすすめです。星空撮影でハードルとなる、ピント合わせや露出の決定がほぼフルオートですんでしまうことや、液晶モニターがかなり明るく表示されるため、一眼レフカメラの光学ファインダーよりも楽に構図を決められるなど、星空撮影の敷居を大きく下げてくれます。
もちろん、画質は一眼レフカメラやミラーレスカメラにはかないませんが、まずはコンパクトデジカメで星空撮影の楽しさを知り、「もっときれいに写したい」と思ったあとにレンズ交換式の一眼レフカメラやミラーレスカメラへとステップアップするのもよいでしょう。
星空モードのあるコンパクトデジカメは、持つ機材を少しでも軽量化したい、登山や海外旅行のお供としても優れものです。よいシーンに出会ったらポケットからカメラを取り出し、パチリと撮影。そんな星空撮影の楽しみ方もよいものです。
外付けモニター・ノートパソコンを使うのもよい
持って行く荷物が増えてしまいますが、大きめの外付けモニターを接続したり、ノートパソコンと接続してリモート撮影をするのもよいでしょう。被写体とじっくり向き合って撮影する星空撮影なら、そのようなスタイルでの撮影も効果的です。
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