写真が上達するキーワード事典
第9回

写真の奥行きを表現する「遠近感」と「消失点」とは

多くの人がスマートフォンを手にするようになり、日常的に写真を撮るようになりました。近年のスマホはアプリの機能も充実しており、特に写真撮影の知識がなくても、ひとまず使っていれば使い方は覚えられるものです。

ただ、TLで見かけたインフルエンサーの写真のような、目を惹く写真を撮りたい!となると、用語の意味を知る必要が出てきます。

写真が上達するキーワード事典」では、写真撮影にまつわる100の用語を個別に解説。本格的に写真を学ぶにあたって頻出する用語について理解を深めることができます。

本記事では「遠近感」について解説します。

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平面の写真に奥行きが感じられるようにする

画面の中で近くにあるものを近くに感じ、遠くにあるものを遠くに感じることを「遠近感」といいます。遠近感を効果的に生かすことで、手前にあるものと奥にあるものが離れて見えるように感じられるなど、平面である写真で 奥行きを表現できます。遠近感や遠近法のことを「パースペクティブ」と呼ぶこともあります。その略語である「パース」から、遠近感を強調することを「パースを付ける」などといったりします。

遠近感はレンズワークとフットワークでコントロールできます。焦点距離が短くなるほど近景と遠景の距離感が強くなり、焦点距離が長くなるほど弱まる傾向です。広角レンズでは近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さく写りやすくなります。ただ広く切り取るだけでなく、近くにあるものと遠くにあるものの大きさの違いが画面上で強調されるようなアングルやポジションを見つけることが大切です。遠近を意識することで奥行きが出て、遠くへ離れていくほどすぼまった感じに写ります。反対に望遠レンズでは近景と遠景の距離感が弱くなり、両者が接近しているように写る遠近の圧縮が生じます。

撮影距離と遠近感

画角が広くなるほど肉眼で見た以上に遠近感が強まります。画面内の被写体の大きさが同じでも、広角レンズの方が背景が遠くに感じます。離れた場所からだとただ広く写っているだけの散漫な印象の写真になります。被写体に近づいて遠近感を強調すると効果的です。

遠い 
近い

遠近法と消失点

「遠近法」とは絵画などで遠近感や立体感を表現する方法のことです。「線遠近法」と「空気遠近法」に大別されます。線遠近法では3次元の空間を、「遠・近」「高・低」「広・狭」などを目で見たときと同じような距離感で表現できるように、2次元である平面上に近くのものは大きく、遠ざかるほど小さく描き分けます。

実際には平行になっているラインを放射状に描くことで遠近感を表現します。平行な直線は遠ざかるほど近づいていき、やがて消えます。そのラインが交わる点が「消失点」です。

アングルやポジションを工夫

焦点距離が短くなるほど遠近感が強調されますが、フットワークも大切なポイントです。アングルやポジションを工夫することで画面の端から中央に向けて収束するようにパースが付きやすくなります。画面内にラインがあるときは「消失点」を意識してみましょう。被写体の奥行きや高さなどが伝わりやすくなります。

手前と奥の被写体を意識する

広角レンズで 撮影しても、遠くにあるものだけを切り取るなど平面的に狙っても遠近感は生まれません。ただ広く小さく写るだけで散漫な印象の写真になります。手前と奥の被写体の位置関係を意識することが遠近感を効果的に生かすポイントです。被写体に近づいて「近」と「遠」を対比するような画面構成にしましょう。


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著者プロフィール

岡嶋 和幸

岡嶋和幸(おかじま かずゆき)

1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」「九十九里」「風と土」「海のほとり」などがある。

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