あなたは「いい写真」と聞いてどのような写真を想像するでしょうか。人によってその定義はそれぞれです。なかなか思った通りには転ばない偶発性も写真撮影の面白さですが、結果的には「撮影者の伝えたい事柄がしっかり伝わる」写真が「いい写真」といえるのもかもしれません。
「いい写真を撮る100の方法」では、スナップ写真を中心とした100点の写真について、撮影意図や撮影時のエピソードを交えながら、表現力を鍛える視点や思考法について解説。撮影者として他者に自身の感動やその場の空気感、興味の対象を伝える写真表現に向き合う姿勢を学べる内容にまとまっています。
本記事では第2章「場所と光で印象の8割が決まる」より、光量と光の質についての考え方について説明します。
そこに光があって初めて写真は成り立つ
自分が撮った写真も、あるいは他の誰かが撮った写真を見た時も、いいと思う時はいくつかの要素がある。もちろん一点豪華主義なこともあるが、いずれにせよ僕が最も重要だと思う要素は光だ。なぜなら写真は光がなければ写らない。肉眼では真っ暗でも、感度ISO10万いくつといったデーモン小暮閣下の年齢くらいまで上げれば、うっすらと陰影が写ることはある、それが写真として成立するかどうかといえば、まずしないと思う。
10万いくつは極端としても、かなり暗い場面でも感度を上げれば撮れるのは確かだ。しかし光には明るさをもたらすとともに、陰影をつくるという役割もある。また光には柔らかい硬いという質もある。大気中のチリが多ければ光は拡散されて柔らかくなる。朝晩や冬など太陽が低い時も、大気の層を長く通り抜けるため、日中や夏に比べると光は柔らかくなる。この柔らかい光が陰影を美しく表現しやすい。天井に蛍光灯が灯るより、間接照明の方がムードが出ることを思い出していただければわかるだろう。
もちろんギラギラと照らす直射日光も、そこから生じるコントラストや影をうまく利用するという手はある。ただし夏のように太陽が真上にくると、影は真下にできるのでそれを生かすというのは難しい。そんな時は建物の陰でもかなりの光量があるので、例えば被写体の位置を自分でアレンジできるポートレートなどは、明るい日陰を探すのがいいと思う。
この写真は中国の平遥という城郭都市でホテルの茶館を撮ったもの。平遥は黄土高原の中にあるため黄砂でいつも空が黄色く、太陽も霞んでいた。そのおかげで光には独特な柔らかさと色味があった。