あなたは「いい写真」と聞いてどのような写真を想像するでしょうか。人によってその定義はそれぞれです。なかなか思った通りには転ばない偶発性も写真撮影の面白さですが、結果的には「撮影者の伝えたい事柄がしっかり伝わる」写真が「いい写真」といえるのもかもしれません。
「いい写真を撮る100の方法」では、スナップ写真を中心とした100点の写真について、撮影意図や撮影時のエピソードを交えながら、表現力を鍛える視点や思考法について解説。撮影者として他者に自身の感動やその場の空気感、興味の対象を伝える写真表現に向き合う姿勢を学べる内容にまとまっています。
本記事では第2章「場所と光で印象の8割が決まる」より、自分なりのお気に入り撮影ポイントを見つけるコツについて解説します。
近所に「いつものあそこ」を見つけておく
写真は場所に依存する表現行為だ。なにせその場所に行かなければ撮れないし、裏を返せば自分がいる場所しか撮ることができない。一方でカメラを持ち歩き、シャッターを押す”撮影範囲”は個人差がある。たとえば有名な写真家でもカメラを肌見放さず、食事から道端のゴミまで何でも撮るという人もいれば、普段はカメラを持ち歩かないという人もいる。
僕は何でも撮るわけではないが、近所のコンビニへ行くときでも最低コンパクトカメラ1台は携えていく。撮りたくなる事象に遭遇する可能性は、東京の自宅前でも、世界のどんな街とも本質的には変わらないからだ。そしてとくに事象がなくても、外を歩いたら必ず一枚はシャッターを切るようにしている。そのためにちょっと遠回りをすることもある。たった一枚のために何をすべきか考え、実際に体を動かすことが大事なのだ。
少しばかり時間があれば、近所にいくつかあるお気に入りのポイントに出掛ける。大抵は凡庸な写真しか撮れないが、実際に現場で何が撮れるか考えることが目的なので、それはそれで構わない。そしてごくたまに思わぬ写真が撮れる。その勝因は時間なのか季節なのか、あるいは環境的なことなのか。そうして撮ることや考えることを繰り返すことが、自分の嗅覚や感覚を鋭くするのだ。
どんな場所をポイントにするかは好みの問題だが、視覚的に気になる建物や路地、それらを含んだ風景がよいと思う。視覚的な魅力がなければ、繰り返し行う。またピンポイントで場所が見つかるまでは、感覚を頼りにルートを決めて、いろいろな時間や天気に歩いてみるのもいい。何の変哲もないたばこ屋が、雨が降ると軒先に並べた新聞や雑誌へビニールのカバーをかける。それだけでも写真家としては大きな発見といえる。