シネマティック・フォトの撮り方
第10回

「写真のセレクトと並べ方」思い入れのある写真も1枚まで。飽きのこないセレクトを心がけよう

撮影した写真を他者に見せる目的は様々です。ただ記録として見せるならば「撮って出し」でも十分ですが、そこに撮影者が持った感情や、直接関係ないなんらかの意味合いを乗せたいと考えたとき、それはたとえ最終的に何も手を加えなかったとしても、表現を試みたことにほかなりません。

画面の色合いは写真や映像の印象を一変させます。例えば映画の画面をよく見てみると、シーンによっては現実の風景とはかけ離れた色合いで表現されていることに気づくでしょう。こうした映画的なカラー表現は、しばしば写真の調整でも用いられます。

シネマティック・フォトの撮り方」では、写真に映画的な演出を加えることを大前提に、撮影時に留意すべきポイントや編集方法、鑑賞する際の心構えも解説。著者の上田晃司さんは写真と映像の両方で作品の撮影を続けており、静止画の画作り解説を主たるテーマに据えた本書の製作においても、映像製作の考え方を採用しています。

本記事ではChapter4「映画のように写真を鑑賞する」より、写真のセレクトと並べ方について解説します。

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シネマティック・フォトの撮り方

写真セレクトは時間軸とバリエーションに気を配る

Adobe Bridgeの編集画面。バリエーションが出るように写真をセレクトしていく。

飽きないように同じようなシーンを続けない
スライドショーを作成する上で悩むのは、写真の並べ方だろう。自由に配置できるだけに難しいのだが、いくつかおすすめの方法がある。まず、スライドショーは組み写真だと思っていただければいい。

組み写真は、複数の写真を組み合わせてストーリーや撮影者の意図などを伝える。スライドショーも同じように写真を選択するとうまくいく。とはいえ、「そもそも組み写真が苦手!」という方も多いだろう。その場合は、旅や日常を時間軸で表現してみよう。時間軸で撮影した写真を組み合わせてスライドショーにするだけで統一感のある作品に仕上がる。

スライドショーはできるだけバリエーションを見せた方が良い。写真展などでは同じような写真を並べて世界感を表現することもあるが、動画は同じようなシーンを続けて繋げないのがセオリーだ。スライドショーも次のカットが大幅に違う方が、視聴者は飽きずに見ることができる。例えば、5カットで構成したほぼ同じ構図の海の写真のスライドショーと、同じ5カットでも海、太陽、海の寄り、海と山、海と鳥といったシーンが入り交じったスライドショーを作ったとしよう。同じ海だけのスライドショーは単調であまり見る気がしなくなるのは容易に想像がつく。一方、バリエーションで組んだスライドショーは変化があるので飽きずに見ることができるだろう。思い入れがある写真はどれも入れたくなるが、思い切って同じシーンは1枚にすることだ。

静止画でも動きが感じられるように並べる

スライドショー用の静止画を選択する際は画像管理ソフトウエアを活用するとスムースだ。筆者はAdobe Bridgeを使用することが多い。まず、画像をざっくりと選ぶ。次にレイティングなどを活用して絞り込んでいく。そして使用する枚数に合わせて、分かりやすい順番に並び替える……といった流れだ。

下に掲載した写真は、筆者が香港で撮影した画像のセレクトだ。静止画とはいえ映像を作るイメージでストーリーの展開を考えながらセレクトしていく。メインカットの補足や際立つ1枚を配置したら、強弱をつけて日常の写真などを入れてバランスをとっていく。何度も調整しながら起承転結ができるように並び替えていこう。静止画でも動きが感じられるように配置していくのがポイントだ。

並べ順の例

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シネマティック・フォトの撮り方

著者プロフィール

上田晃司

(うえだ・こうじ)
写真家。広島県呉市出身。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM 、ショートフィルムなどを制作。現在は雑誌、広告を中心に活動し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影する。ニコンカレッジ、LUMIXフォ卜スクール、Profotoオフィシャルトレーナーなど、年間100回以上の写真教室や講演を行う人気講師でもある。
http://www.koji-ueda.com/

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