オールドレンズ・ライフ
第25回

Mマウントレンズが使えるキヤノンのフルサイズ!「EOS R」

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つなのです。

オールドレンズ・ライフ 2019-2020」に掲載している特集の一つ、「最新ミラーレスとオールドレンズ」では、35mmフルサイズおよび中判サイズのイメージセンサーを搭載した現行ミラーレスカメラで、オールドレンズを試用しています。オールドレンズのベースボディとして捉えた現行ミラーレスの実力を探る企画です。

本記事では、キヤノンEOS Rでオールドレンズを使う際に押さえておきたい設定と、作例についての記述を抜粋して紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2019-2020

広角好きはマゼンタかぶりに注意

昔からのキヤノンユーザーであれば、同社のデジタルカメラにライカMマウントレンズが付くだけで感涙モノだろう。

キヤノンユーザーにとってオールドレンズは身近な存在にちがいない。デジタル一眼レフのEOSが採用するEFマウントは、フランジバックが44ミリと短い。そのためマウントアダプターを介して様々な一眼レフ用オールドレンズが装着できた。ヤシコンのツァイスレンズをEOS 5D系列で使うというスタイルは、ある種の定番ですらあった。

そんなオールドレンズに寛容なデジタル一眼レフのEOSも、どうにもならないことがあった。それはレンジファインダー機用のレンズ、端的に言えばライカMマウントレンズを付けることだ。こればかりは一眼レフだとどうにもならない。それを軽々と実現してしまうのが、このフルサイズミラーレスのEOS Rである。フランジバック20ミリの本機は、マウントアダプターさえあればどんなオールドレンズでも装着できる。ただし、オールドレンズにやさしいボディかと言うと、必ずしもそうとは言い難い。

ボディ内手ブレ補正は未搭載、レンジファインダー機用広角オールドレンズはマゼンタかぶりが顕著、という具合にいくつか留意すべき点がある。マウントアダプターがあればオールドレンズの装着自体は制約がないものの、ベストな環境と言えないのも事実だ。

社外製マウントアダプターを経由して撮影する時は、「レンズなしレリーズ」を「する」に設定しよう。この設定を怠ると、オールドレンズ装着時にシャッターが切れない。

オールドレンズ装着時、ISOオートの低速限界は手動設定しておこう。使用するオールドレンズの焦点距離に合わせ、「1/ 焦点距離」秒を目安に設定すると良い。

オールドレンズ撮影の際、「LVソフト撮影」は「しない」に設定しておこう。これが有効になっていると、高速シャッターで撮影した時、画像にケラレが発生しやすくなる。

KMZ MC Zenitar-M2s 50mmF2

EOS Rに似合うオールドレンズ、真っ先に思い浮かんだのがこのMCゼニターM2s 50ミリF2だ。丸みを帯びた鏡胴が、曲線主体のEOS Rに良く似合う。1993年生まれのロシア製。オールドレンズとしては比較的新しいレンズだ。

EOS R + MC Zenitar-M2s 50mmF2 絞り優先AE F2 1/5000秒 ISO100 AWB RAW ジャンクのオートバイを、その経年を数えるようにていねいに捉えている。開放のナチュラルなシャープネスが功を奏したカットだ。
KMZ M42 mount MC Zenitar-M2s 50mmF2 中古価格:5,000~10,000円 1993年に登場した4群6枚ダブルガウス型の標準レンズだ。フィルム一眼レフのゼニット122とセットになっていることが多い。

Leica Summilux-M 35mmF1.4

キヤノンのカメラにライカMマウントレンズが付く。しかもフルサイズで撮れる。昔からのキヤノンユーザーにとって夢のような組み合わせだろう。オールドライカレンズの懐かしくも繊細な写りをEOS Rで満喫しよう。

EOS R + Summilux-M 35mmF1.4 絞り優先AE F1.4 1/640秒 -0.33EV ISO100 AWB RAW 合焦部からやさしく滲みが立ち昇る。反面、アウトラインはどこまでも繊細さを失わない。そんな球面ズミルックス特有の描写を楽しもう。
Leica M mount Summilux-M 35mmF1.4 中古価格:200,000~300,000円 1961年に登場した5群7枚の大口径広角レンズ。初期タイプは非球面レンズを使っていないため、球面ズミルックスの名で呼ばれることがある。

オールドレンズ・ライフ 2019-2020

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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